最高裁裁判官「国民審査」ガイド! 6人全員の過去の判決から見えた信条や人柄とは?
●外交官キャリアから最高裁に入った石兼公博氏は、フランスやアメリカの日本大使館勤務を経て、福田康夫首相の時代には総理秘書官を務めた。アジア大洋州局長として韓国慰安婦問題や北朝鮮ミサイル問題の解決を目指し奔走。その後、国連大使になり、ロシアを非難する安保理決議が出されてもウクライナへの武力攻撃がやまない現状に「ものすごいフラストレーションだ」と述べた。 【最高裁判所での判決】 戦後しばらく「不良な子孫の出生予防」の名目で、特定の障害を持つ国民に本人の同意なく不妊手術を行なうことを認めていた旧優生保護法は憲法に違反し、被害者に国家賠償すべきとする結論に賛同(この判決には今崎長官、尾島判事、宮川判事も関与しており同意見)。 ●裁判官として最高裁まで出世した平木正洋氏は、裁判員制度下の事件報道に関する会合の場で「容疑者の自白や前科、生い立ちなどの報道は一般市民に偏見を与えるため配慮が必要」と述べ、メディア関係者らの反発を食らった。若手時代にはオウム真理教の幹部だった村井秀夫の刺殺事件に陪席裁判官として関与。「日本はテロのない平和な国だと思っていたので、衝撃的だった」と当時を振り返る。観劇が趣味で、歌舞伎や文楽から宝塚歌劇団、吉本新喜劇まで幅広く鑑賞する。 【高等裁判所での判決】 とある町長選で票の取りまとめを頼んだ有権者に2000円相当の梅干しを配ったのが票の買収か争われた裁判で、地裁で示された有罪判決を支持した。 積水ハウスが"地面師"組織に架空の土地取引を持ちかけられて55億円をダマし取られた詐欺事件で、懲役7年を言い渡した地裁判決を支持。 ●大阪市出身の中村愼裁判官は、京都大学法学部を卒業後、裁判官として活動し、主に民事裁判を担当してきた。オフの時間は健康づくりのため、水泳やウオーキングに勤しむ。 【地方裁判所での判決】 テレビ所有者にNHKとの受信契約を義務づける放送法の規定は契約の自由を害すると市民が訴えた裁判で「義務づけには一定の合理性や必要性がある」と訴えを退けた。 全国小売酒販組合中央会の年金資金145億円が回収不能になった事件で、組合に海外社債への投資を持ちかけたブローカーに賠償を命じたが、投資を仲介したクレディ・スイスについては「リスクの説明義務違反はあったが、投資決定には関与していない」として、賠償は不要と結論づけた。 平木判事と中村判事は、まだ就任から間もなく、最高裁で判決にマトモに関与していないが、幸い裁判官出身なので過去の判断が見つかった。 それぞれの裁判官の判断内容が納得できるかどうか、じっくり検討し、余裕があればご自分でも積極的に調べておいたほうがいい。この記事を見つけたあなたはラッキーだ。総選挙の"3票目"まで責任を持ちながら投票できるすてきな有権者になれて、よりスッキリした気分で投票所を後にできるだろう。 取材・文/長嶺超輝 写真/時事通信社