最高裁裁判官「国民審査」ガイド! 6人全員の過去の判決から見えた信条や人柄とは?
京都市営地下鉄の駅で警察官と市民が揉み合いのケンカとなり、市民が前歯を折られて警察官が現金5万円を支払った事例で、市民のみが傷害罪で起訴された事例。今崎裁判官は執行猶予付き有罪判決を言い渡し「事件を隠すため金銭を払った警察官にも落ち度はあるが、先に手を出したのは市民のほう」と指摘した。 また、元横綱の朝青龍から1億円をダマし取った男に対して懲役5年6ヵ月の実刑判決を言い渡しつつ、朝青龍に対しても「同情を禁じえないが、怪しげな投資話に乗ったところに甘さがあった」と指摘した。 【最高裁判所での判決】 戸籍上は男性で、女性として生活しているトランスジェンダーの経済産業省職員が、職場では勤務先オフィスから離れた女子トイレしか使用を認めない人事院の判定を不服として訴えた事例。その判定を違法とした結論を支持しつつ「この基準は不特定の人々が使う公共施設にも当てはまるわけではない。一律の解決策になじまず、社会的な議論が欠かせない」との補足意見を述べた。 また、殺人被害で死亡した男性の同性パートナー遺族に、一般の夫婦と同じように犯罪被害者給付金の支給を認めた判決に対して「この解釈がほかの法令に波及する恐れがあり、社会的影響が大きい」と反対意見を述べた。 ●尾島明裁判官は神奈川県藤沢市出身で、裁判所に所属しながら通産省(現在の経済産業省)に出向し、WTO(世界貿易機関)の紛争解決手続きの策定にも携わるなど、国際的にも活躍してきた。『博士の愛した数式』などで知られる芥川賞作家、小川洋子さんの文体に惹かれるという。 【高等裁判所での判決】 東日本大震災による福島第一原発の停止で工場が操業不能になり、損害賠償を求めた企業に対し、地裁が認めた賠償額を1億円以上減額した。 【最高裁判所での判決】 ミュージシャンで俳優のピエール瀧氏が薬物事件で有罪判決を受け、その出演映画への助成金の交付が取り消された事例で「表現の自由の観点から見過ごせない措置だ。出演俳優が助成金から直接利益を受け取るわけではない」と、助成金の交付を命じた。 また、1票の格差が最大で3.03倍に広がった2022年の参院選で、憲法に違反しないと結論づけた多数意見に対し、格差を是正しようと努力するも進展が見られず「違憲状態」だとする反対意見。 ●弁護士から最高裁入りした宮川美津子氏は愛知県豊橋市の出身で、特許や商標など知的財産権に詳しい専門家として活動。仕事柄、多様なエンタメに触れるよう努め、音楽では米津玄師や藤井風、King Gnuがお気に入り。 【最高裁判所での判決】 在日米軍辺野古基地の建設予定海域に生息する大量のサンゴを移植するよう、国が沖縄県に行なった命令は合法との判決。基地建設に反対する県の訴えを退けた。 2012年の国民年金法改正で年金受給額が減らされたのは、憲法で保障された生存権や財産権の侵害だと訴えられた裁判で、「年金制度の持続可能性を確保する観点から、減額は不合理といえない」として国民側敗訴の判決。