医師が明かす衝撃の実態「アフターピルを処方した女性の1割強は性被害者」 加害者に父親も…望まない妊娠、リミット72時間なのに日本だけ入手に「壁」
画面越しに見る若い女性は、ほんの少し緊張した面持ちだったという。 【動画】性交後に服用する「緊急避妊薬」試験販売開始
岡山市にある「ウィメンズクリニック・かみむら」。院長・上村茂仁さんはモニターの向こうにいる女性の話を聞いていた。オンラインでの診察だ。女性は緊急避妊薬(アフターピル)を求め、岡山県のある処方箋薬局に駆け込んできた。 上村さんは、女性が薬局で記入した問診票を元に、一番重要な点だけを念押しした。 「相手はパートナーで、同意はあったけど避妊できていなかったということですね」 女性が「はい」と答えると、上村さんはピルを処方すると告げた。最後に「心配なことはないですか」と尋ねる。すると、女性から質問が次々に飛び出した。 「行為から1日以上たってしまいましたが、妊娠は回避できますか」 「アフターピルを飲むと、生理の時期は変わりますか」 上村さんは、48時間以内なら85%くらいの確率で防げること、生理は遅れたり早まったりすることを説明した上で、こう語りかけた。 「何か不安があったらどんなことでも連絡ください」
アフターピルは海外ではごく簡単に入手できるのに、日本には高いハードルがある。このため上村さんらは、できるだけ迅速に処方する独自の取り組みを始めている。取材を進めると、女性たちが置かれた苦境が浮かび上がってきた。(共同通信=我妻美侑) ▽海外では既に「必須医薬品」、無料で提供も アフターピルは、排卵を抑える働きがある飲み薬。性交後72時間以内に服用すれば高い確率で妊娠を防ぐことができる。 海外では1970年代半ばから使われていて、世界保健機関(WHO)の必須医薬品リストに入っている。必須医薬品とは、安全性や効果、品質が裏付けられていて、「いつでも誰もが手頃な価格で入手できるようにすべき」とされているものだ。 現在では、アジアやヨーロッパなど90以上の国・地域では処方箋なしで購入できる。費用は数千円程度。学校や医療機関で無料提供される国もある。フランスでは2023年から、全ての女性が無料で入手できるようになった。