断捨離ブームから15年…提唱者やましたひでこが今こそ語る「断捨離の意味」とは
あらゆるしがらみからの解放
不用意に入り込むものを「断」ち、不要なものは「捨」て、執着を手「離」す――。「断捨離」が日本で一大ブームになってから今年で15年。提唱者のやましたひでこさん(70)に今、聞いてみたい。断捨離の意味とは何ですか? 「私自身、断捨離しながら過ごしたこの15年間で人生は大きく変わりました」と、やましたさんは語る。 ベストセラーになった最初の著書「新・片づけ術 断捨離」を刊行したのは2009年12月、55歳の時だ。当時は、夫の故郷の石川県で暮らす主婦で、ヨガの講師もしていた。現在は、東京と沖縄のマンション、鹿児島の宿泊施設と三つの拠点を行き来しながら、講演などで全国を飛び回る。 石川で主婦をしていた頃、「嫁だから」「母だから」という役割を周囲から無意識のうちに押しつけられていると感じ、それが嫌だった。打破しようと格闘する中で「私は私。役割は服みたいに、自分の意思で脱いだり着たりできる」と考えるようになった。
暮らす空間も同様だ。「自分の意識の変化に伴って、自分に適した空間は自然と変わっていく」と語る通り、著書のヒットを受けて上京。東京都内だけでも6回引っ越した。面積は広くしたり狭くしたり。「断捨離をとにかくモノを減らすことだと誤解されることがありますが、目指すのは最小化ではなく『最適化』」。お気に入りの器や経年変化が魅力の家具など、大切に持ち続けている品もある。 東京と石川の2拠点生活から、再び変化したのは今から7年前。石川で暮らす夫の「寒いな」という一言に、南への移住を提案した。古くからの友人知人が近くにいて、いつも同じ思い出話の繰り返しになりがちな「地縁」に疑問を感じていたからだ。 沖縄で住まいを見つけてからは、夫もどんどん前向きになり、移住先で新たな人間関係や趣味も持つように。「地縁」を手放したといっても、石川の友人たちが沖縄に遊びにくることもあり、人の縁は続く。「断捨離は、ものだけでなく、人間関係、思い込みなど、あらゆるしがらみからの解放なんです」 東京では一人暮らし、沖縄の家には夫と愛犬が暮らす。さらに、今から4年前には、温泉で有名な鹿児島県の指宿にある宿泊施設で「指宿リトリート『リヒト』」構想をスタートさせた。利用者が日常から離れ、自由な立ち位置で自分を見つめ直す場にしたいと空間作りに取り組む。 70歳になった今も断捨離しているやましたさん。終活として死後を視野に断捨離する高齢者もいるが、それは違う。「死の準備ではなく、より快適に生きるための断捨離なんだと、改めて伝えたい」 やましたさんの姿と笑顔は軽やかだ。「もう年だから、という思考も手放していきましょう!」と朗らかに笑ってみせた。