元楽天・聖澤諒が目撃した「初めて見る野村監督の涙、弱い姿」 野村克也監督時代最後となった2009年のクライマックスシリーズの裏側
野村監督から学んだこと
野村監督から学んだことはたくさんありますが、一番は「考えて野球をする」ということ。二軍にも一軍の選手よりも速いボールを投げるピッチャーはいます。遠くに飛ばせるバッターもいます。でもなぜか一軍ではなかなか結果を出すことができない。そんな選手をたくさん見てきました。一軍の選手も二軍の選手も体格や資質、技術にはそんなに違いがあるようには思えません。その違いはどこにあるのでしょうか? プロ入り以来、ずっとその答えを考えていましたが、野村監督の下で野球をするなかで、その答えが分かったような気がしました。それは「深く考えて野球をしているかどうか」という違いです。僕も技術が足りないところからのスタートでしたが、その足りない部分をどうしていけばいいのかを考えてきました。考えることで技術を補っていくことができ、やがて技術も伴っていったのです。 ただ打って、ただ投げている選手よりも、考えて野球をする選手、考える能力が高い選手が活躍できる世界なのです。それはプロ野球だけではなく、世の中の全ての業種にも言えることかもしれません。
水があったブラウン監督
野村監督が辞められたことはショックというよりも、むしろチャンスだと捉えるようにしていました。野村監督は一芸を大事にする監督でしたので、例えば先輩の憲史さんであれば一芸は「打」と認識されていましたし、僕の一芸は「足」と認識されていました。試合で使っていただけることはありがたいことなのですが「レギュラーを獲る」という目標を掲げた僕にとっては、「足」以外の部分もアピールして一芸の選手から脱却せねばならず、そういう意味では新しい監督に代わるのは大きなチャンスだと考えていました。 新監督は広島でも監督を務めていたマーティー・ブラウン監督。楽天の選手のこともあまり知らないだろうから先入観なく見てもらえるのではないかという期待と、初めに良い印象を与えることができれば、レギュラー獲りも見えてくるかもしれない。そんなことを考えていました。