トランプ氏にあんなことができるのは安倍首相だけだった…外務次官が思わず「ダメです」と止めた"仰天の一言"
ドナルド・トランプ氏とカマラ・ハリス氏が激しく争う米大統領選は、11月5日に投票日を迎える。日本は新大統領とどのように対峙すべきなのか。新著『日本外交の常識』(信山社)を出版し、外務省次官、駐米大使を務めた杉山晋輔さんに、ノンフィクション作家の児玉博さんが聞いた――。 【写真】外務次官、駐米大使を務めた杉山晋輔さん ■「ハリスブーム」に翳りが見えている ――米大統領選の行方をどう見ていますか。 10月半ばまでおよそ2週間、米国に行き、多くの政治関係者と面会を繰り返しましたが、皆が口を揃(そろ)えるのは、 「今回はわからない」 それほどドナルド・トランプ(共和党)が勝つのかカマラ・ハリス(民主党)が勝つのかまったくわからない状況だと。 かつて、ジョージ・ブッシュとアル・ゴアが戦った2000年の大統領選挙はフロリダ州の開票結果をめぐって訴訟にまで発展し、決着するまでに1カ月以上もかかったことがありました。さすがにそこまでは長引かないだろうと言われていますが、簡単ではなさそうですね。 ――その原因は何でしょうか? 民主党の大統領候補がジョー・バイデン大統領から副大統領ハリスに変わり、その新鮮さからメデイアも好意的に評価し、ブームのようなものまで起きました。 そうですね。ハリスが登場した時は、やはり女性候補であること、それも黒人候補であることなどの新鮮さが持て囃(はや)されたのも確かです。しかし……、そもそもハリスは副大統領としての評価が非常に低かった。スタッフがころころ代わる、ハリス自身のパワハラ疑惑があり……、行政手腕、リーダーシップにもずっと疑問が投げかけられていた。だから、好意的な評価が一転、瞬く間に疑問符のほうが多くなったような印象ですね。 ■「トランプ大統領」は分断の結果に過ぎない ――それがゆえの拮抗でしょうか。 言うなれば、今回の選挙はトランプ対ハリスというよりも、トランプを選ぶか、トランプ“以外”を選ぶかの選挙なんですね。だから、史上稀(まれ)な接戦になっているんだと思いますね。 ――トランプというと、どうしても米国に分断をもたらした政治家という特異なイメージが強い。 一般にそう捉えられていますが、私の見立てはちょっと違う。まず、公職についたことがない。なにせ初めての公職がアメリカ合衆国の大統領ですから。そして、トランプをトランプたらしめたあの言動。政治的な前例や慣例をまったく無視したかのような強烈な言動は、いわば世界中に驚きと混乱と困惑を与えた。けれでも、本人はまったくそんな批判を意に介さない。 つまりですね、トランプ現象と言われるような“分断”は、トランプ大統領が誕生して起こったわけではなく、“分断”が生まれていた状況にトランプが乗っかったような気がします。建国以来抱えている人種問題が、より深刻化しているのがその原因ではないでしょうか。だから、トランプ現象はトランプが生んだというよりも、アメリカという国が作り出した現象だと思います。