2歳児のインターネット利用率が「58.8%」…スマホに慣れた子どもは「リアルな遊びに興味を示さない」
「固形物をちゃんと食べられない子ども」が増加
ーー家庭環境が大きく変わったことで、子どもたちの身に色んな変化が生じているんですね。 石井:ルポの中で紹介した別の例でいえば、3歳、4歳になっても、固形物をちゃんと食べられない子がかなり増えてきています。固形物をちゃんと噛んで飲み込めないので、のどに詰まらせてしまう。そのせいで、保育園によっては、ある程度の年齢になってもドロドロとした離乳食のような食事を提供しているところもあります。誤嚥事故の防止のためです。こうしたことが起こる原因として、先生が指摘するのが親の多忙さです。通常、固形物を食べられるようになるには、親が何カ月もつきっきりその方法を教えなければなりません。 毎日「あーんしようね」「もぐもぐしてね」「ゴックンしようね」と声をかけ、自分でもやって見せる。でも、親が多忙さゆえにそれをしなければ、子どもは固形物を食べる方法が身につかない。それで、誤嚥事故が起こるというのです。 本書のタイトルは『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』と「スマホ」という言葉がついていますが、これは子どもたちを取り巻く環境の変化の象徴としてタイトルに組み込んだだけで、多面的に子どもたちの変化を描いていると考えていただければと思います。
「スプラトゥーン」のほうが面白い?
ーーご著書の中の、スマホやゲームの刺激に慣れて、リアルな遊びに興味を示さない子が増えているという指摘に驚かされました。公園へ連れて行っても、一定数の子たちは立ちすくんでしまうとか。 石井:私はゲームやスマホが悪いとは思いません。適度に使用するなら良いものです。半面、ゲームにせよ、ショート動画にせよ、ものすごく刺激の強いものです。それを一日に何時間もやることによって嗜癖となって抜け出せなくなると、これはこれで問題が生じます。 某保育園で、こんなエピソードがありました。ある日、先生が、子どもたちに紙で制作した大きな恐竜に、色を塗らせようとした。すると、子どもたちが「やりたくない」「おもしろくない」と言いだした。先生がなぜかと聞くと、子どもはこう答えたそうです。 「家でスプラトゥーンをやっているから、こんなつまらないことやりたくない」 「スプラトゥーン」とは、ゲームのソフトで、町中を塗料で塗りたくる対戦型の遊びです。これを家でやっているので、小さな筆で絵具を塗ることに興味がわかないというのです。冗談みたいな話ですが、このエピソードを教えてくれた保育園の先生はこう言っていました。 「刺激性の高いエンターテイメントにのめり込んでいる子は、現実のいろんなことに興味を持ちません。現実のものは刺激が弱すぎると言うのです。一旦こうなると、リアルで行われること全般に関心を示さなくなります」 現在、2歳児のインターネット利用率は58.8%になっています。日本語を覚える前に、それらを使っている。これが嗜癖にまでなってしまっている子には、こういう事態が起きているということなのです。