「いい奥さん」でいないと居場所がない。夫は、私とは対照的な美人で気が利く女友達と浮気をしている【書評】
夫の浮気に気づいていても、なかなか離婚に踏み出せない妻は少なくないだろう。しかし、妻だけではなく「子ども」も父親の浮気を知って苦しんでいるのなら……? 【漫画】本編を読む
『パパ、浮気してるよ?娘と二人でクズ夫を捨てます』(芸子 / KADOKAWA)は、子どもから「パパと離婚しちゃえば?」といわれる衝撃のシーンからはじまる物語だ。 主人公の香澄は、商店街で小さなクリーニング屋を営む夫の実家で同居する主婦。キツイ性格の姑と、学生時代から憧れの人だった夫・洋介と小学3年生の娘・ゆみと4人で暮らしていた。憧れていた人と結婚できたにも関わらず、その生活の実態は「思っていたよりもずーっと居心地が悪い」と愛想笑いを浮かべる日々だった。
洋介の親友である雅也が転職し東京で働くことを決めたことで、香澄とゆみの人生は一変する。雅也の妻・絵美が地元に残り、親友夫婦の別居生活がはじまってから洋介は変わっていく。洋介と元同級生である絵美との距離感は近すぎるものに変化して、娘のゆみにもキツく当たるようになってしまう。 夫や周囲の人からどんなに蔑ろにされても「いい奥さん」でいないといけないみじめさに、香澄は心が折れそうになっていた。ある日、洋介は絵美を優先するばかりか、絵美の娘のためにゆみの宝物を取り上げ、それに怒った香澄に暴力を振るおうとした。その結果、別居することになるのだが、香澄は優しかった洋介がまた「元に戻ってくれる」と信じる気持ちを割り切ることはできなかった。
離婚はしたくないし、娘のためにもするべきではない。そんな気持ちと同じくらい、香澄は洋介と離婚するべきだとも感じていたのだろう。ほとんど黒であろう浮気疑惑に、他の女性を優先するためにみじめな扱いを受ける自分と娘。離婚の文字が頭をよぎるには充分すぎる状況だった。 無理に笑って元の家族に戻ろうとしている母の姿を、ゆみはきっとこれ以上見たくなかったのだろう。手をぎゅっと握り締めて不安を飲み込み、ついに「パパと離婚しちゃえば?」と口にする。