「宇宙はゴミだらけ」――NASAもお手上げの「宇宙ゴミ」回収に挑む、日本人起業家の奮闘
今年5月、中国のロケットの残骸が地上に落下する恐れがあるというニュースが流れ、騒然となったことは記憶に新しい。宇宙空間には過去の衛星やロケットの残骸(スペースデブリ)が無数に飛び回っており、今回の件は氷山の一角にすぎない。先月のG7サミット(先進7カ国首脳会議)でも持続可能な宇宙環境の構築が宣言に盛り込まれたように、宇宙ゴミは人類共通の課題だ。10年前まで誰も解決策を持たなかったスペースデブリ。この問題の解決に奮闘する日本人がいる。IT業界から宇宙産業に身を投じた男は、どうやって道を切り開いたのか。(取材・文:キンマサタカ/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
今年3月22日。日本企業が開発した衛星を積んだロケットが宇宙空間へと飛び立った。積まれたのはアストロスケール社の「ELSA-d」。スペースデブリ除去の実証実験用衛星だ。 同社のCEOを務める岡田光信(48)は言う。 「打ち上げて軌道に乗った場所から、デブリに接近して真後ろにつきます。すごい速度で回転しているデブリの状態を見極め、背後からそっと捕まえます。これは私たちの会社の独自技術です」
宇宙空間を飛び回る人工衛星などの破片、いわゆる宇宙ゴミ(スペースデブリ)は人類共通の課題だ。
今年5月には、4月29日に中国の大型ロケット「長征5号B」の残骸が、大気圏へ再突入して地上に落下する恐れがあると報じられた。その後大部分は大気圏で燃え尽きたが、一部破片がインド洋上に落下したとも報じられ、空から人工物が降ってくるという映画のような事態に恐怖を覚えた人も多かった。
スペースデブリが生み出す損失は1日1000億円
JAXAによれば、宇宙空間に存在する大きさ10センチ以上のゴミはおよそ2万個。小さいものを合わせると1億個以上あるとされる。 それらのゴミが秒速7キロ以上の猛スピードで軌道上を飛び回っている。これはピストルの弾丸の10倍以上の速さだという。 問題に詳しい東京都立大学の小島広久教授はこう語る。 「使命を終えた人工衛星や、打ち上げに使用されたロケットの2段目は空気抵抗がない高度軌道を回る場合、落下せず地球を周回し続けてスペースデブリになります。また、故障やミサイルによる人工衛星破壊実験などにより、大小様々なデブリが発生して、気象衛星、通信衛星、GPSなどの測位衛星に衝突することが懸念されているんです」 人間が作り出し打ち上げた衛星が寿命や事故によって役割を終えると、それらはゴミとなって宇宙空間を漂い続ける。浮遊するゴミ同士がぶつかることで、ゴミはさらに増えていく。