救急の切り札!三重県津市の“空白地域”を守る、機動的救急隊「M.O.A」に密着
去年、三重県津市で救急車が出動した回数は、過去最多の1万8110回。平均すると30分に1回、救急車が出動しており、“救急空白地域”が生まれることもあったといいます。しかし、なかには「チューハイを飲み過ぎてしまった」という緊急を要さないも通報も。
搬送の遅れは、患者の生死を左右する
出動の増加は、救急車の到着の遅れを招きかねません。実際、通報者が“救急空白地域”にいたことから、救急車の到着が遅れてしまった例がありました。 去年7月、津市の北部に住む男性が、60代の妻がけいれんを起こしていると通報。しかしこの時、男性の住む地域では、救急隊が出動していたため、別の管轄の南地域の救急車が出動するという事態に。本来、10分以内で到着できるはずが、20分ほどかかってしまったといいます。
救急空白地域をはじめ、全国的に課題となっている“救急のひっ迫”。『三重大学病院』高度救命救急・総合集中治療センターの鈴木圭センター長は、重症の場合、搬送の遅れは、患者の生死を左右しかねないと指摘。 「搬送時間が1分でも1秒でも短い方が、患者にとってはいいわけですよね。予後としても良くなる可能性が高いですから。(搬送の遅れは)予後にも影響を与えている可能性はあると思います」と話しました。
そんななか、救急空白地域を埋めるために導入された「M.O.A」。時には、通信指令センターの判断により、救急車が手薄な場所へ“先回り”して向かうこともあるそうです。
常にすべての救急隊の動きを把握
出動の合間は、事務作業にあたっているM.O.A隊員の3人。作業の途中、時折手を止めてはどこかを見ていたのは、M.O.A隊長の東 悟史さん。同じく小野さんも、東さんと同じ方向を向いてソワソワしています。
二人の視線の先にあったのは、各地域の救急隊の出動状況を示すモニター。“救急空白地域”に駆けつけるM.O.Aでは、常にすべての救急隊の動きを把握しているのです。
その“把握力”は、毎朝の車両点検時でも垣間見ることができました。指令無線が入った瞬間、点検作業の手を止め、指令を聞く東さん。無線が流れる途中、ある方向に向かって指を指しました。