BMW アクティブハイブリッド X6は日本車とは価値観の違うハイブリッドモデルだった【10年ひと昔の新車】
燃費性能など二の次、「ベースモデル以上に強力な走りの性能」が狙い
2010年7月、BMW アクティブハイブリッド X6が欧州で発表されてから1年以上を経て、ようやく日本に上陸した。このハイパフォーマンスSUVの登場は、ハイブリッドモデルを取り巻く環境が成熟しつつあることを実感させた。今回は上陸間のなく行われた試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年3月号より) 【写真はこちら】ホイールはActiveHybrid X6専用のエアロダイナミクスを追求した20インチのストリームラインスタイリング297を装着する。(全6枚)
「日本で一番売れたクルマ」がトヨタプリウスだった2010年。この年はまた、輸入ハイブリッドモデルがより当たり前に感じられるようになった1年でもあった。 かつて日本車が圧倒的に優位に立っていたハイブリッド技術。しかし、気がつけばすでにメルセデスやBMWのフラッグシップサルーンにはハイブリッドモデルが当たり前のようにカタログに加えられ、ポルシェやフォルクスワーゲン、アウディなどもSUVカテゴリーからアプローチを掛けようと準備中だ。そんなハイブリッドモデルのバリエーション拡大の勢いは、この先増すことはあっても簡単に過ぎ去ってしまうことは考えられない。これからは、「輸入車もハイブリッドカーを迷って選べる」時代が到来したということだ。 そうした中にあって、とても個性的な輸入ハイブリッドモデルが日本に上陸した。「世界初のSAC」を謳うX6シリーズに設定された、『アクティブハイブリッドX6』だ。7シリーズといい、このX6といい、BMWが手掛けるハイブリッドモデルが狙うキャラクターは一貫している。 それはズバリ、世界のハイブリッドモデルの中にあって最強の動力性能であり、付加価値は「ベースモデル以上に強力な走りの性能」という姿勢が明確に打ち出されている。極論すれば燃費性能など二の次、少なくとも現時点でリリースされているBMWのハイブリッドモデルからは、そんなメッセージが読み取れるのだ。 アメリカ東海岸で開催された国際試乗会から早1年と2カ月。同社のハイブリッドモデル専用カラー「ブルーウォーターメタリック」に彩られたX6のハイブリッドバージョンと無事に日本で再会できたことを、まずはここで喜びたい。実は、国際試乗会が開催された2009年末の当時には、「まだ日本に導入を行うか否かは決定していない」という状況にあったのだ。 当時の日本では、ハイブリッドモデルは圧倒的に優れた燃費性能こそを売り物とするエコカーの代表という扱い。そこに、同じ『ハイブリッド』を謳いながらも価値観の異なるモデルを持ち込むことに、インポーターであるBMWジャパンは一抹の不安を抱いているかのようでもあった。 しかし、そんな懸念を払拭した今回の日本導入は、ハイブリッドモデルを取り巻く環境が世界で成熟しつつあることを示していると言ってもいい。パーソナルでインディビデュアルなモビリティに求められる価値とは、単に使用するエネルギーが少なく低エミッションを実現させることにのみ依存するのではなく、まずは「自ら操る楽しさにこそ宿るものでもある」、アクティブハイブリッドX6のキャラクターには、そうした思いが込められているようにも感じられるからだ。 このモデルの狙いどころは、実際にアクセルペダルを踏み込んでみれば、誰もがすぐに納得できるに違いない。