教室から広がるインクルーシブ社会。パラリンピック教材開発者の一人、マセソン美季さんの想い
当たり前を疑い、対話を重ねる
――共生社会を実現するために、大人たちに伝えたい思いがあればお聞かせください。 マセソン:性別や年齢、障害の有無のような属性で人を判断するのはやめてもらいたいです。そして相手に対して分からないことがあれば一人で想像するのではなくて、まずは相手に聞いてみる勇気を持ってほしいと思います。当たり前を疑う習慣を身につけてもらいたいです。 『I’mPOSSIBLE』を使った教育現場でもよく起こることなのですが、子どもがした質問を第三者の大人が「それは失礼だ」と制限してしまうことがあるんです。もちろん質問に答えるかどうかは相手次第になりますが、実はそういった質問の中にも本質的な学びがある気がします。大人の言動から見て学び、これは聞いていい質問、聞いてはいけない質問と子どもが分けてしまうと、障害に対する理解が深まっていかないと思うんです。 日本でも民間の事業者に対して合理的配慮が義務化されましたが、建設的な対話をする姿勢が一番欠けていると感じています。壁を取り払うために相手が必要としていることを聞き、自分にできることを考える。そんなシンプルな関係づくりが、共生社会の実現には必要だと思っています。
編集後記
マセソンさんのお話しの中で印象的だったのは、障害のある人に対して仰々し過ぎるという日本の空気感でした。特別視するのではなく、まずは相手に手助けが必要か聞いてみて、必要そうであればお手伝いをする。そういったシンプルに対話を重ねていくことが共生社会を実現するために必要なのかもしれません。 そして子どもたちがインクルーシブな社会を築く素質を十分に持ち合わせているのに、それを邪魔してしまっている大人が多いとも感じました。素直な視点を持った子どもたちから学びを得ることも大切し、子どもも大人も一緒になって共生社会を実現していく。その姿勢が必要なのだと感じました。
日本財団ジャーナル編集部