「冤罪と未成年の死刑囚」が執筆の背景に 『正体』原作者・染井為人氏が「僕自身もちょっと救われた」と話す、原作と映画の関係性
──正義を振りかざすような風潮に危険性を感じられますか? 自分が正しいかどうか、その善悪の判断は自分にしか決められません。そんななか、僕自身が気をつけていることは、他人を傷つけてまで自分をすっきりさせないこと。自分の欲のために人を傷つけることがあってはならない。シンプルに考えると、それが一つの基準なのではないかと思います。ネットの情報といったいろいろなものに吸い込まれて煽られて…そこに乗っかっている世の中ですけど、自分の目で見て聞いて判断することが大事なのではないかなと。『正体』では、主人公と出会った人々がそれぞれ行動を起こしていきますので、自分の目で判断することがキーワードとして大事なのかなと僕は考えます。藤井監督ともそんな話をした気がします。 人が100人いればそこには100通りの考えがあり、ときに感情のかけ違いやもつれが生まれる。それがトラブルに発展することも少なくはないだろう。そうさせないためには何が必要なのか──。考え方が違う人間同士が寄り添い、一つの社会で生きていくために大切な“信頼”の生み方を、『正体』を世に送り出し大きなプロジェクトとして制作者に託した作家・染井為人氏の懐の大きさから感じた。
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