イーロン・マスクが秘密裏に進めた「世界最大のスパコン施設」、建設の裏側
イーロン・マスクの「常套手段」
例えば、グーグルがオレゴン州ザ・ダレスに置くデータセンターの水使用データは、市が秘密にしていたが、地元メディアの訴訟によって公開された。しかし、フォーブスがxAIとの契約についてテネシー渓谷開発公社に問い合わせると同社は、契約上の合意によりその「センシティブな事業情報」を守る必要があると主張し、xAIのプロジェクトとNDAを結んだかどうかも明言しなかった。 さらに、メンフィスの経済開発機関EDGEは、xAIに関する公的記録の開示を「企業秘密」を理由に拒否した。EDGEの理事会メンバーは市と郡によって任命され、連邦所有のテネシー渓谷開発公社の理事会は米国大統領によって指名され、上院で承認されている。 「これは前例がないことだ」と、メンフィスの環境保護団体「プロテクト・アワ・アクイファー(地下水層を守れ)」の代表を務めるウォード・アーチャーは述べている。彼らは、xAIの水の使用について情報を開示するよう地元の機関に求めている。「選挙で選ばれた公職者や任命された公職者が、そんなことをするのはおかしい。なぜそんなに秘密にする必要があるのか理解できない」と彼は述べている。 ■イーロン・マスクの「常套手段」 マスクの会社がNDAを用いて情報開示を妨げる行為は他の州でも確認されており、ネバダ州では、テスラが州政府に与えられる税制優遇措置の情報を公開しないよう州の高官らとNDAを結んだ。テキサス州ブラウンズビルでも複数の政府機関がスペースXによってNDAへのサインを要求されたが、これらの契約は、最終的に州検事総長の命令で公開された。また、テキサス州バストロップでも、マスクのトンネル掘削会社のザ・ボーリング・カンパニーが工場を建設した際、ある住民が計画文書を見るためにNDAに署名するよう求められたと主張していた。 行政の透明性の推進を訴える団体であるテネシー州オープンガバメント連合のデボラ・フィッシャーは、NDAが州の公的記録法に勝ることはないが、情報へのアクセスを妨げるために使用されることがあるとフォーブスに語った。「市民にとっては、巨大企業が地元の行政から多くの譲歩を約束され、納税者のお金を使ってプロジェクトを進める一方で、その活動を秘密にしてやりたい放題やるというのは、非常にフラストレーションを感じることだ」とフィッシャーは語った。