イーロン・マスクが秘密裏に進めた「世界最大のスパコン施設」、建設の裏側
「10万世帯分の電力」を消費するデータセンター
■秘密裏に進められたプロジェクト FBIや保安官事務所を含む法執行機関は、フォーブスからの度重なる取材依頼に応じなかった。しかし、文書によれば、警察と保安官事務所の両方がxAIの企業セキュリティ責任者であるローガン・ビーチに署名済みのNDAを提出した。これらの機関が、xAIの施設の警備を担っているかどうかは不明だ。マスクは以前、スペースXのテキサスの打ち上げサイト近くの公道やビーチを封鎖するために無認可の警備員を使っていた。 ミシシッピ川沿いの工場跡地に建設された、xAIのスーパーコンピューター施設はわずか4カ月で完成した。「Colossus(コロッサス)」という愛称がつけられたこのプロジェクトを商工会議所は6月に公表し、その「数十億ドル規模の取引」のスピードを誇っていた。議会のメンバーは、その時点で初めてプロジェクトの存在を知り、xAIが市内で最大の電力と水を消費する企業の1つになる見通しであることについて、「もっと時間をかけて情報を得たい」と要請した。しかし、その1カ月後にこの施設は正式に稼働を開始した。 マスクの会社は、以前からプロジェクトの詳細を秘密にするために政府関係者とNDAを結ぶ手法をとっており、メンフィスでもそのやり方を踏襲した。CTCプロパティは3月にxAIの代理人として商工会議所に最初に接触し、すみやかにNDAを結んだが、市議会や市民がプロジェクトについて知ったのは6月になってからだった。 ■「10万世帯分の電力」を消費 xAIのメンフィスへの進出は、現地の電力や水のインフラに莫大な負担を負わせることになる。このデータセンターは10万世帯分の電力を必要とし、サーバーを冷却するために毎日100万ガロン以上の水を地下水層から汲み上げる予定だ。xAIは現在、地域のエネルギー供給者であるテネシー渓谷開発公社(TVA)から、合計150メガワットの供給能力に関する承認を待っており、これには新たな変電所の建設が必要となる。マスクは最近、同社のスーパーコンピューターを構成するGPUの数が「数カ月以内に倍増する」とツイートした。さらに、ニュースサイトSemaforは、この施設が10万個のエヌビディア製の高性能チップH100を同時に稼働させることに成功したと報じた。 AIの熱狂は「ハイパースケール」なデータセンターの急増を引き起こし、地域の電力網や重要な資源が限界に達するのではないかという懸念を生んでいる。とはいえ、州のプライバシー法やNDAによって、こうしたプロジェクトの重要な詳細は、「企業秘密」や「機密情報」として一般に公開されないことが多い。