「時給はいつも最低賃金」な50代女性が「政治に関心を持つ」ことを諦めない理由
男性は女性から政治を学びたがらない？
――和田さんのご著書『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか？ 国会議員に聞いてみた。』をきっかけに政治に関心を持つようになった方は多いですよね。 和田靜香(以下、和田):ありがたいことに、「この本を読んで、政治に興味を持ちました」とか「この本が入口です」と言われることは多いですね。私が地方に講演などで呼んでいただくのもこの本がきっかけですし、読書会の題材にしてくださったという話もたくさん聞きます。 ――どんな声が多いのでしょうか。 和田:私自身、もともと政治に関心がないわけではなかったけれど、この本を書くまで何もわからなくて、そうした「わからない」「おかしい」という思いを小川淳也議員に直接ぶつけていったんですね。この本を読んで私の不安や疑問を読者の方々が追体験して、同じように悩んだり迷ったりしてくれているようです。 ――主な読者層はやはり女性ですか。 和田:読者は圧倒的に女性ですね。文庫版で解説を書いてくれた音楽プロデューサーの松尾潔さんや作家の高橋源一郎さんなど、男性でも面白かったと言ってくださる方はいらっしゃるんですが、男性の場合はもともと政治や文化に関心がある方ばかり。男性は、女から政治なんて学びたくないのかも(笑)。
「何も考えない国民性」を変えるのは難しい
――和田さんが本を書かれた3年前と今とで、政治が変わったと思うことはありますか。 和田:総理大臣は安倍晋三さんから菅義偉さん、岸田文雄さんになって今は石破茂さん。それに、安倍さんが亡くなってから、旧統一教会の問題や自民党の裏金問題など、いろいろな問題が噴出して、変わっていないようで少しずつ変わっている。 でも、選挙はそんなに盛り上がってはいないですよね。私のFacebookにいる人には昔からのつながりの音楽業界の人が多いけど、誰1人選挙のこととか書いていないし。 ――盛り上がらない様子にガッカリしたり、疲れたりすることはないですか。 和田:でも、選挙に行かなかったらもっと悪くなるんじゃないかなと思うんですよね。今はギリギリここにいるけど、みんなが諦めて選挙に行かなくなったら、あっという間に独裁に進んでいって、今よりもっとひどいことになるのではないかと思うので。とりあえずギリギリのところで保つためにも、諦めないでおこうという気持ちかな。 ――文庫版の加筆では小川さんと戦争の話をしています。 和田:小川さんと話すために戦争関連の書籍などをいろいろ読んだんですが、満州事変、日中戦争、アジア太平洋戦争といった戦争の流れや植民地化などについて、恥ずかしいことに人生で初めてちゃんと把握したんです。 その当時のメディアの報じ方や庶民の反応を見ると、今とすごく似ていて。 当時は新聞の他に、ラジオ放送が1925年(大正14年)から開始され、すぐに大相撲の放送が始まります。ちなみに、江戸時代には飢饉があると相撲の大会をやっていたように、昔から相撲は政治に利用されてきたんですが、みんな相撲が聞きたくてラジオを買って、ラジオや新聞などのメディアが報じるままに声が大きい人の意見をみんなが信じて拍手したり、逆に叩いたりする。今と全く同じことが起こっていたんです。 愚かにも戦争によってたくさんの人が亡くなって、戦争が終わって一時少し反省したけど、またすぐに何も考えないようになっていった。こんなにも延々と何も考えない国民性だったことを歴史から振り返ると、今さら変えるのはすごく難しいと思ってしまいました。
