なぜ“過去最強”渋野日向子は劇的逆転Vを果たすことができたのか…磨いた修正能力とぶれないメンタル
そのプレーオフでも残り220ヤードを3Wで2オンに成功。しかも、ボールは上りのラインとなるピン左3メートルにピタリと止まった。 「打ち切ることだけを考えた。緊張したけど、真ん中から入ってくれて、すごくうれしかった」 これでプレーオフは3戦3勝。勝負強さはやはりピカイチだ。 勝因は修正能力の高さだろう。 前週の「マスターズGCレディース」の予選落ちの原因を「あの週は急に寒くなって、飛距離も出なくなった。その分、欲だと思うけど、振りに行って、リズムが速くなっていた」と自ら分析した。 今大会の開幕前の28日には「ゆっくり上げて打つ。予選落ちして(岡山の)実家に帰ったときも、庭の鳥かご(練習用ネット)で、そこを意識してやっていた。きょうも感じは悪くなかった」と自信を持って話せるまでに修正して万全の準備を整えた。 「今週は左足下がりのライからめちゃミスをしていた。18番も左足下がりのライで、かち上げた瞬間に右にペラっと行く感じなので、なるべくボールと友達でいたいと思って、目線を低くして、トップから切り返しが速くならないように冷静に考えて気をつけた」 最終ラウンドでも修正能力を発揮した。 「ティーショットもフィニッシュが取れないくらいのマン振りだったけど、先週よりもトップからの切り返しができたからこそ真っすぐ飛んだんだと思う」 技術的な裏付けのある劇的な逆転勝利だったのである。
海外メジャー初出場で優勝した2019年「AIG全英女子オープン」ではキャディーも務めてくれた青木翔コーチのもとを離れて、1年が経つ。独り立ちしたあとは、男子プロの石川遼の助言を参考に再現性を求めたスイング改造に取り組み、ウエッジを4本入れたクラブセッティングなどに変更してきたが、基本は一人で考え、一人で答えを出す。この1年は、試行錯誤の連続だったが、「自分の信じたことをやり切るだけ」と一本芯の通った考えがブレることはなかった。そのメンタルの強さが、プレーオフでの驚愕の集中力を生む。渋野の勝負強さの根底にあるものだ。最終ラウンドの18番とプレーオフは、その象徴だった。 コーチをつけずに一人でやることにはデメリットもあるだろう。だが、自分で見つけた答えは間違いなく大きな財産になる。これまではウエッジを1、2ヤード刻みで打つ練習をしてきたが、最近はほかのクラブでも距離を自在に打てる練習に取り組んでいる。 「1球1球、打つ距離を言ってもらって、自分で考えてその距離を打つようにしている。今回はその成果も出たかな」。今大会の3日間のフェアウエーキープ率は驚異の95.24%で、パーオン率も79.63%。今の渋野はゴルファー生活の中で“過去最強”の状態にある。 1カ月後に迫った来年の米ツアー出場権を懸けた最終予選会(Qシリーズ)もコンディション調整に失敗しない限り、問題なく上位で通過するだろう。その先に見据えるのが、米ツアーでの2勝目。“最強渋野“が来シーズンに世界の舞台でとてつもない旋風を巻き起こしそうな予感がする。