貯金ゼロ、年老いた両親を抱え、結婚もあきらめた…37歳「介護職の男性」の苦悩
「本人だけのせい」とは言えない
このハラスメント事情も、カズさんを悩ませる大きな理由の一つだ。仕事を辞めたいのか、違う仕事に就きたいのか? 結婚やご両親のことはどう考えているのか。 「本当にもう、どうしていいのかがわからない。職場の状態も改善するとは思えない、上司に訴えたりしたら居辛くなるだから何も言えない。いまさら違う仕事に転職するのも難しそう。両親も高齢になってきていて、そろそろ介護が必要になるかと思うと、うんざりしてきてね。 考えると頭が痛いので、なるべく考えないようにしていて、家には寝に帰る程度なんです。彼女とは会いたいですが、結婚は無理かと思うと、LINEする回数もどんどん減ってきていますね。どうしよう。どうしていいのかわからないんです」 カズさんは、さまざまな悩みが絡みあって、本当に疲弊している様子だった。そして思うのだが、こうした男性は現在は意外と多いのだろう。かつてよりひとりっこが多い時代だ。物価高のなか景気も悪い。自分ひとりのお給料だけでは両親の老後と妻や子どもも養うことが不可能な時代になってきている。 自力でなんとかできるところもあるかもしれない。ついギャンブルや風俗に逃げて貯蓄できなかったのは本人のせいかもしれない。だけど、それを差し引いても、なんともできないところもあるだろう。 なんとか、今の働き盛りの世代が、普通に働けば普通に暮らせる社会になってほしいものだと、つくづく感じる取材であった。
安藤 房子(作家・恋愛心理研究所所長)