貯金ゼロ、年老いた両親を抱え、結婚もあきらめた…37歳「介護職の男性」の苦悩
女性入所者からの「2つのハラスメント」
カズさんが20代のころは、人生設計なんて考えたことがなかったそうだ。まじめに働いてはいたし、“このまま、まじめに働いていれば報われる”と信じてきた。でもその一方で、長時間労働の憂さをお金で晴らしてきてしまった。労働に疲れ、お金はない。最近は、自分の人生の今後に不安ばかりがつのると言う。 「実は父もギャンブルとお酒が好きで貯蓄があまりないんです。おそらく毎日賭けかお酒かです。男ってそんなもんなのかなあと昔は思っていましたが、今となっては、頼むから自分の老後資金くらい自分で用意しておいてよと。 もちろん、育ててもらって感謝していますよ。でもまさか、両親の老後資金をほぼぜんぶ背負うなんて思ってもいなかった……結婚どころではありません」 そしてもうひとつ。この1年くらい、職場ではカズさんを憂鬱にさせる出来事が続いている。 「施設の入所者からのハラスメントです。いえね。認知症になると怒りっぽくなるのはわかっています。でも度をこして怒鳴りつけてくる老人が増えてきてると思うんです。特に男性に多いのですが、食事やお薬を提供しに行くと、僕の手をばーんとはらってきて、“このばかやろう!!”なんて言う男性がいるんです」 女性の入所者からも、2つのパターンのハラスメントを受けている。 「女性の場合は、私が食事を持っていったりすると、“男性はいやなのよね! 女性にして、女性に!!”とヒステリックに大きな声で言ってくる人がいます。そう言われても、こちらもシフトに従って仕事をしているわけでね。僕だって、相手が女性だと余計に気を使うので、本当は男性ばかり相手にしていたいですよ。 一方、僕の手を握ってくるおばあちゃんとかいて、これはこれでセクハラっていうか、嫌ですよね。コールがあって駆け付けると、口紅をつけたおばあちゃんがね、“具合が悪いのよ、ここにいてくれる?”って手を握ってくるんです。 “私、あなたみたいな子が好みなのよ”って見つめてきて、つかんだ手にぎゅーっと入れて離さないんです。なんとか手をほどいて“すみません”って逃げましたけどね。3人のおばあちゃんからそんなことを何度もされました」