小池百合子氏の都知事出馬で再燃「学歴問題」を理論的に解決する最新情報技術があった……ブロックチェーンの「記録改竄不能」の効果とは
研修歴を記録する「オープンバッジ」
ブロックチェーンの技術を活用して、個人の学習歴を記憶する仕組みが開発され、運用されている。これは「オープンバッジ・システム」と呼ばれるもので、統一的な国際規格が作られ、活用が広がっている。 これによって、一人ひとりの個人がどのような研修等を受けたかを、改竄不可能な情報として、記録していくことができる。 紛失や再発行の手間がない。また、個人がオンラインやSNS上で公開することも可能だ。電子履歴書に載せることもできる。 私は、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞出版社、2017年)の中で、個人データをブロックチェーンで管理する仕組みが開発されつつあることを紹介した(第7章の4)。私は、これは非常に重要な技術だと思ったが、そのときには実験的な仕組みでしかなかった。それが、いま、現実に利用されるシステムに成長した。 海外では、すでに7000万以上、年間2400万のオープンバッジが発行されている。米ハーバード大学などの名門大学でも活用されている。 日本でもさまざまな団体が登録を行っており、利用が広がっている。 例えば、東京商工会議所は、行なっている検定試験を受験した人に対して、申請に応じてオープンバッジを授与している。この手続きは、すべてインターネットを通じて行なわれる(具体的な手続きは、東京商業会議所「オープンバッジについて」を参照)。 大学の社会人向け講座を修了した場合や、国家資格を取得した場合も、バッジで証明できる。たとえば、放送大学がインターネットで配信している有料講座を修了すると、それぞれについてバッジが発行される。東北大学が提供する大規模公開オンライン講座を受講し、テストに合格すると、オープンバッジが与えられる(NIKKEIリスキリング)。
専門家の組織間の流動性が促進される
オープンバッジを活用すれば、採用にあたって、採用者が情報を入手できる。こうした情報が活用されるようになれば、専門家の組織間の流動性が促進されるだろう。 リスキリングの必要性がいわれるが、単に研修を受けるだけでなく、受講の記録を残し、学習歴を可視化する必要がある。それを転職の際に活用することができる。 2023年6月16日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」のなかでも、「業種・企業を問わず個人が習得したスキルの履歴の可視化を可能とする一助として、デジタル上での資格情報の認証・表示の仕組み(オープンバッジ)の活用の推奨を図る」とされた。 また、デジタル庁のデジタル推進委員に応募して認められると、オープンバッジが授与される。