小池百合子氏の都知事出馬で再燃「学歴問題」を理論的に解決する最新情報技術があった……ブロックチェーンの「記録改竄不能」の効果とは
専門家の能力活用が必要が最重要の課題
日本経済の閉塞状態を打破するためには、生産性向上が不可欠の課題だ。それを実現するには、高度専門家を最大限に活用する必要がある。このためには、産業構造の変化や経済状況の変化に応じて、専門家が異なる組織間を自由に移動できる仕組みを構築する必要がある。 ところが、日本の経済的な仕組みで最も遅れているのがこの点だ。日本では、大企業を中心として、終身雇用的な雇用慣行がいまでも続いている。大学を卒業して入社した企業に60歳台まで働き続けるのは、ごく普通のことだ。つまり、日本では、専門家の組織間移動が不十分だ。 日本でこれから労働力が量的に減少していくことは避けられない。したがって、人材の質を高めるとともに、そうした人材を活用していくための仕組みを作ることが、緊急の課題だ。 障害になっている要因としては、様々なものがある。その1つとして、個人の能力を、組織外からは適切に判断できないことがある。同一企業内であれば、日常の仕事を通じた勤務評定によって個人の能力を知ることができるが、組織外の人材については、このような情報の入手が難しい。 組織内の評価は、完全なものではない。バイアスを持っている場合も多い。たまたま上司とのそりが合わないために、高い能力を持っているのに、重要な仕事を得られないというケースもあり得る。あるいは、組織内に派閥があり、それから外れているために、昇進できないという場合もあるだろう。 組織の壁を超えた能力評価の仕組みが広がれば、日本経済の生産性向上に対する効果は、きわめて大きいだろう。
野口 悠紀雄(一橋大学名誉教授)