企業の借入金は月商の 5.4カ月分に微減 金利の上昇局面を迎え、財務の二分化が加速か
業種別 改善の兆しもコロナ禍前には至らず
借入金月商倍率が高い上位20業種のうち、コロナ禍前(2020年3月期)と比べ、月商2カ月分以上増加した業種は、専門サービス業(増加3.5カ月分)、繊維工業(同3.3カ月分)、宿泊業(同2.1カ月分)の3業種。いずれもコロナ禍の影響が大きかった業種が並んでいる。 最も起伏が大きかったホテル・旅館運営の宿泊業は、2021年3月期には需要が消失して売上が大幅に減少、同期の借入金月商倍率は20.2倍に達した。その後も移動制限が続き、回復の遅れから22年3月期も19.6倍と解消できなかったが、人流やインバウンドの回復が急速に進んだ2023年3月期、2024年3月期は借入金月商倍率の低減が顕著だった。 ただ、上位20業種中、14業種は2020年3月期から借入金月商倍率は上昇しており、コロナ禍前の水準まで過剰債務の改善が進んでいない。 ◇ ◇ ◇ 2024年3月期の企業の借入金月商倍率は、前年同期からわずかな改善にとどまった。コロナ禍の資金繰り支援で借入金は月商比で平均1カ月分が膨らんだ。その後、3年が経過しても削減額は約半分にとどまっている。コロナ禍から平時に移行し、売上回復や業績が拡大したことを念頭に入れると、実体の借入金の減少幅は数字以上に遅れているとみることもできる。 一方、コロナ禍で一時的に需要が消失して打撃を受けた宿泊業や道路旅客運送業は、2024年3月期決算は観光需要やインバウンドの回復などで売上高が伸び、借入金月商倍率の改善が顕著だった。とはいえ、コロナ禍前の水準とは乖離が大きい。さらなる需要回復を売上拡大につなげることができるか、今期(2025年3月期)の決算で真価を問われることになりそうだ。 ゼロゼロ融資の利用が判明した倒産は2024年9月で累計1,679件に達した。1-9月累計は全国で459件発生し、前年(1-12月635件)とほぼ同水準のペースで推移している。この間、コロナ対応の政策支援も、救済から経営改善や再生支援に大きくシフトしている。すでに企業向け貸出は金利が上昇しており、借入金は返済と金利が重荷になることも危惧される局面に入っている。コロナ禍から平時へ経営環境が大きく変化するなかで、本業の収益力が問われてくるだろう。