「同時進行ってできなくて、器用ではない」演技に歌に貪欲な、松下洸平の人生設計
「自然も多くて、今では帰るとホッとします。でも若い頃は、この絶妙な距離感から、一人暮らしを言い出せないというジレンマがありました。21歳のとき、もう限界だ!と思って、勇気を出して親に言ったら、『なんで? 通えるじゃん』って。そう通えるんだけど、っていう押し問答。初めての一人暮らしは、調布でした。いきなり都心部に行く経済力も勇気もなかったんです。でも、僕にとってそれは革命でしたよ。それまで新宿へ1時間半かかってたのが20分になって、大人になったな~と思いました」 今でも八王子出身者とは、意気投合しやすい。『夜来香ラプソディ』で共演する白洲迅とも八王子トークで盛り上がっているという。 「八王子って何でもあるし、地元びいきの人たちが多いから、中にいるとすごく楽なんですよ。でも、あえてそこから都心に出て一旗揚げようと思う人って、けっこう気合が入っている。なんだろう、都内なんだけど、上京感があるんですよね」
5年、10年スパンで考えている人生設計
なぜ、現在のような売れっ子になれたと思う? そう尋ねると、不意を突かれたように驚いた後、笑った。 「ええっ(笑)?わかんないですね……でも、よく言われるのは、良くも悪くも、すごく普通。自分のことを特別な人間だと思ってないですからね。これから先も、そういう自分でいたいなと思いますし。僕が今まで演じてきた役柄には、特別な人間なんていないんです。みんな普通の人間。それは僕が、自分自身に抱いていることと一緒です。才能豊かな人間だなんて、まったく思っていない。だから、役に入ったときにも特別なことは何もしないんです。そういうどこにでもいそうな人間が、受け入れてもらえたのは嬉しいですね」 シンガー・ソングライターとしても認知が高まってくれば、どうしても「普通」でい続けるのは難しくなるだろう。その先まで見据えて、言葉を続ける。 「誰かに見られているという前提で生きていかなければならなくなりました。でも、それを気にしすぎて、演じるうえで最も大切な『普通であること』を忘れてはいけないと、いつも心しています。特別な仕事をしている感覚はあるんです。誰にでもできる仕事ではないという自覚もある。でも、それをやっている自分を、特別だとは思わない。競争心なんかも、あまりないですし。ああいう人になりたいなっていう憧れの気持ちはありますよ、それは自分のためのガソリンになっていると思う」