多才な建築家・彦根明さんが感動した宿はあのジブリ映画のモデルとなった聖地!
空間を創造するスぺシャリストである建築家は、どのような宿に憧れて、またどんな所に注目して滞在するのでしょうか。今回は彦根明さんが感動したホテル、憧れの宿です。 【写真で見る】建築家・彦根明さんが感動したホテル、憧れの宿
1.彦根さんがこれまでで、最も感動した宿「積善館」(群馬)
群馬県の四万(しま)温泉にある「積善館」は、元禄7年創業の老舗旅館。映画『千と千尋の神隠し』のモデルという説もあり、本館は現存するなかで日本最古の木造温泉宿です。 長年の歴史のなかで増改築が繰り返され、現在は3棟ある宿泊施設のうち、山荘棟の改修プロジェクトが2019年に完成。建築家・永山祐子さんが手掛けた空間は「現代湯治」をコンセプトに心と体を休ませつつ、現代のライフスタイルに合った過ごし方ができるよう新しい魅力を放つ空間に生まれ変わりました。
「永山さんの改修した部屋は、古い日本の柱梁のつくりに対する照明の灯し方が秀逸。和の美しい部屋はそれだけで美しい。 だからこそ、和の空間に現代の設備が取り付けられると違和感は避けられないのに、照明器具が素晴らしく溶け込んでいました。 欄干や柱、梁に真鍮の板を折り曲げたかたちの照明を柱から飛び出さない大きさにうまくつくり、そこに明かりを灯しているんです。そうすることによって古い建築の骨組みが一切乱されることなく、必要な明かりが取れるということをやっていらして…。 これは一見、簡単そうに思えますが、実際に行うのはとてもセンスのいることなんです。それを実現させている点が素晴らしかったですね」
彦根さんの心に残る宿「俵屋旅館」(京都)
また、「心に残る宿」として挙げてくださったのが「俵屋旅館」(京都)です。 「なんで古い俵屋さんが特別なのか?というと、もてなしを大切にしている点だと思います。圧倒的に心遣いが行き届いていました。例えば玄関から入って順番に壁に一輪挿しに花が飾ってあったり、ふと見るとテーブルに花が生けてあったりというのが。それだけでいろいろなことを語ってくれているんです。 ”この季節、特にこの花がきれいに開きました”というようなことを説明は一切なくても、見るだけでパッとこちらに伝わってくる。心尽くしがしっかりと届くように表現されているのが、本当に素晴らしいと思いました。 置いてあるものの置き方1つをとっても、たとえ高名なものでなくても、この宿にあるだけで、すんなりと素晴らしいなと思える。特に説明しなくても、”いいなと思えるものだけがそこにある”というところに感動しました」