なぜ「図書袋」は小学生の必需品なのか? 長野県の「当たり前」を他県出身の記者が調べてみた
「図書袋」って何?記者の疑問
学校の図書館から借りた本を入れる手提げや肩掛けなどの「図書袋」は、長野県内の小学校で当たり前のように使われている。宮城県で小学生時代を過ごした記者は、図書袋の存在を知らなかった。長野県内で脈々と受け継がれる図書袋はいつ、なぜ使われ始めたのか、由来を調べてみた。 【写真】下校時に小学校を訪れてみると…図書袋を持っている人がずらり
手掛かりを探しに…
手がかりを探ろうと、1873(明治6)年に開校し、子どもの学びの様子を記録した学校日誌などを保存してきた旧開智学校校舎(松本市開智)を訪ねた。同校舎学芸員の遠藤正教(まさのり)さん(40)が、1964(昭和39)年の学校図書を借りる際の説明の中に「本を図書袋に入れて、持ち帰る」と記された史料を見せてくれた。確認できる中では「図書袋」に言及する最も古い史料だという。県教育委員会や信濃教育会にも問い合わせたが、由来が分かる記録はこれ以外に確認できなかった。
昔の資料では「自家製」「縦50㎝ 横30㎝」と指示が…
ただ、旧開智学校校舎所蔵の史料の中には、図書袋の作り方が記されているものもあった。70(昭和45)年の図書館運営に関する申し合わせ事項などが記載される「図書館だより」は、紙製と布製の図書袋について記載。紙製は「1枚15円で、図書係より購入」、布製は「自家製」と記されていた。布製はイラスト付きで縦50センチ・横30センチの長方形の袋を指示。袋の口と底の部分にひもが付いており、児童は本を入れて袋を二つ折りにし、ひもで結んで使っていたとみられる。
図書袋の形は変化してきたことが分かった
71年の「図書館だより」は「本年度から、紙製の図書袋は使用しません」と記載。75年の史料には巾着袋の形、84年の史料には現在の形とほぼ同じ肩掛け形式の図書袋が登場するなど、図書袋の形が変遷したこともうかがえた。
なぜ広がったのか?
では図書袋はいかにして全県に広がったのか。県教委によると「図書袋を全県で使うよう教育委員会が指示したとは考えがたい」。信濃教育会総務会計部の清水恒善さんは「県内の公立学校の教員が全県を異動することが、図書袋などの文化が広がる土壌になったかもしれない」とみる。