なぜ「図書袋」は小学生の必需品なのか? 長野県の「当たり前」を他県出身の記者が調べてみた
「みんなが読むものを大切にしましょう」
約40年間、県内の小学校などで教員を務めた信濃史学会会長の後藤芳孝さん(76)=松本市北深志=にも尋ねてみた。自身が小学生のころに図書袋を使ったか覚えていないが、勤めた小学校では児童が使っていたという。由来は分からないとしつつ、下校中に遊んで本を放り出したり、汚れた手で持ったりしないよう「『みんなが読むものを大切にしましょう』と使われ始めたはず」と推測する。
信州の風土が関係している?
大正期に県内を中心に行われた自由教育運動「白樺運動」にも言及。「教科書だけでなく本から知識を得ようという雰囲気は教師の間にあっただろうし、子どもにも伝わったと思う」とし、本を重視するのは「信州の風土かもしれない」と話す。
旧開智学校校舎近くにある松本市開智小学校。下校する児童に図書袋について尋ねると、口々に「お母さんに作ってもらった」「いつも使っている」と元気の良い返事。6年生の小俣理瑚さん(11)は、2年生の春に名古屋市の小学校から転校してきた。それまで図書袋は知らなかったとし、「本をたくさん入れて肩に掛けられて楽。毎日使うお供です」と笑顔で話した。
今回の取材では、図書袋の発祥について分からなかった。それでも、本を大切にした先人たちの思いが、図書袋の形で今日まで受け継がれているのだと感じられ心が温かくなった。紙の本も図書袋の文化も、まだまだ受け継がれてほしいと思った。(高橋紀渚)