新車が売れない! 今、日本の自動車市場で何が起きている?
一方、ネットには、《円安だから海外に輸出したほうがボロ儲けできるわけで、国内の納期遅延や受注停止は方便だ!》《日系メーカーが海外市場で販売好調なのが、国内販売をないがしろにしている何よりの証拠だろ?》というような声も飛び交っている。海外ブランド車の幹部は苦笑いしながらこう言う。 「その話の真偽はわかりませんが、上半期は海外ブランドも苦戦していますけどね」 JAIA(日本自動車輸入組合)によると、上半期の輸入車の販売台数は11万3887台(前年同期比7.2%減)で2年ぶりのマイナス。加えて、6月の輸入車の販売台数は2万2534台(前年同月比8.1%減)。これで6ヵ月連続の前年割れとなった。 ■最盛期の61%まで落ち込んだ日本市場 史上最も新車が売れたのは1990年の約777万台だ。これに対して、昨年は約478万台だったので38%減となる。ちなみに市場規模は最盛期の90年から61%まで落ち込んでいる。 一方、国内の乗用車の保有台数に目を向けると、90年が約3492万台だったのに対し、22年は約6216万台で78%も増加。自工会(日本自動車工業会)によると、新車の平均保有期間は7.7年で、10年超が2割強とのこと。 「一部のスポーツモデルなどを除けば国産モデルは燃費性能に優れ、先進安全機能も充実している。N-BOXを例に出すまでもなく、軽の進化は目覚ましい。今どきのクルマは整備を怠らなければ、購入から10年以上が経過しても快適に乗れる。 しかも、最近のクルマは値上げがすさまじく、20年前の1.5倍近い価格に。さらに、日本の平均給与所得は90年代半ばから右肩下がりです。当然、新車販売の動きは鈍い」(自動車誌編集者) 長年、新車販売が厳しい状況にあるのはよくわかった。では、なぜ今年上半期にリーマン・ショックを下回る販売台数まで一気に落ち込んだのか? 日系メーカーの販売店からはこんな声が出た。 「初売り、決算、ボーナス商戦で感じたのは、お客さまの財布のひもが固くなっていること。実際、これまで定期的に整備や洗車をご利用くださっていたお客さまの足も遠のいている。理由を伺うと、ガソリンや物価の高騰などで懐具合が厳しいようで......」 7月8日、厚生労働省が発表した5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動を反映させた実質賃金は前年同月比1.4%減となった。これで26ヵ月連続のマイナスとなり過去最長を記録。要するに長引く物価高騰により実質賃金はマイナスが続いているのだ。 当然、庶民は生活維持に四苦八苦。事実、7月からの電気料金の大幅値上げが家計を圧迫し、殺人レベルの酷暑にもかかわらず、電気料金を節約するため、エアコンの使用を控える家庭も少なくないという。 この節約志向の流れは今年の夏休みにも影響が出そうで、日本生命の「夏季休暇の過ごし方」というアンケート調査によると、2位の国内旅行を引き離し、半数近くとなる48.4%の人が、「自宅・自宅周辺で過ごす」と回答。言うまでもないが、庶民は新車どころではないのだ。