今日W杯アジア2次予選。吉田麻也が背負う3つのプライド
「話したから何かが変わった、というわけじゃないと思いますけど。開幕してから何度も話したい、と考えてきたけど、先発から外れるたびに理由を聞きにいくのもどうなのかな、と。我慢してチャンスを待って、結果を出して、それでもダメだったら話そうと思っていたので」 もう我慢できない、とばかりに監督室のドアをノックした経緯をこう振り返った吉田は、思わず表情をしかめている。トッテナム戦は1-2で、チェルシー戦では1-4で連敗。2勝1分け5敗と黒星が先行し、降格圏がちらつく17位で中断期間を迎えて帰国していたからだ。 「ひとつでも多くの試合に出たいと思っているし、自分としてはそこで目に見える結果を出さなきゃいけない。試合に出られればある程度の結果を出せる自負があったからこそ、スパーズ(トッテナム)とチェルシーに負けたことで、状況を難しくしてしまったと感じるので」 自身の軌跡を再び右肩上がりに転じさせるためにも、アジア2次予選の2連戦で納得のいく結果と内容を求めたい。これまでに通算10ゴールをマークしているが、今回招集されている20人のフィールドプレーヤーのなかでは、実はMF原口元気(ハノーファー96)と並ぶ最多得点者でもある。 「相手がベタ引きして、スペースがないなかで崩す難しさは、アジアで戦う上でいつも課題だった。そういうときにセットプレーで一発取れればいいな、と思っていますけど、こう言うと『セットプレーで一発狙う』という記事になるから、あまり言いたくないですね」 ジョークをまじえながら取り囲んだメディアを笑わせたが、森保ジャパンはセットプレーからのゴールが極端に少ない。今年に入ってからは、1月のサウジアラビア代表とのアジアカップ決勝トーナメント1回戦で、コーナーキックを冨安が頭で叩き込んだ1点だけにとどまっている。 「チーム全体としてセットプレーからの得点を武器としてもたないと、最終予選やワールドカップ本戦で苦しくなる。僕自身も最近、まったく点を取っていないので。相手とのレベルの差があっても、正直、2次予選ではセットプレーから複数の点を取りたい」 吉田のゴールはハリルジャパン時代の2017年3月のタイ代表戦で、コーナーキックを頭で決めたのが現時点で最後になっている。再びサウサンプトンへ戻った後の戦いに弾みをつけるだけでなく、3年後のカタールワールドカップにもつながる一撃を求めて、吉田はプライドをほとばしらせる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)