【リセットコリア】韓国憲法裁は迅速な決定で混乱収拾しなくては
突然の非常戒厳宣布で内乱容疑を受けている尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が弾劾訴追により職務停止された。続けて大統領権限を代行した首相まで弾劾訴追により職務停止される未曾有の事態が発生した。国民は不安な目で事態を鋭意注視している。新たに大統領権限を代行することになった崔相穆(チェ・サンモク)副首相兼企画財政部長官は、大統領代行としてバランスを取ることができず政争の真ん中に入って混乱を加重させた韓悳洙(ハン・ドクス)首相の前轍を踏んではならない。 政治問題は国会に任せてひたすら経済問題に集中し韓国経済の墜落を防ぐのに力を尽くさなければならない。さらに多くの政治的不確実性が発生しないよう政府は民生安定以外にはすべて下ろさなければならない。 事態を沈静化させ憲政秩序を回復するには憲法裁判所の役割が重要だ。憲法裁判所は訴訟指揮権を行使して速やかに審判手続きを進めなければならない。事実関係は単純明確で長引かせるものではない。大統領が職務執行中に違憲・違法を犯しそれが重大ならば弾劾を認容して罷免を宣告すれば良い。 戒厳宣布権は大統領権限で職務執行の範囲に入る点は疑問の余地がない。だが大統領の権限行使は憲法と法律に定められた手続きと形式を守らなければならず、内容的にも憲法と法律で付与した範囲内にあってこそ正当化できる。権限行使の要件は権限の不正乱用を防ぐために法律に決めておいたもので、大統領が主観的・任意的に判断することはできない。 戒厳宣布は国防部長官または、行政安全部長官の建議、閣僚会議招集と審議を経て文書で行うことになっている。首相と閣僚の副署、大統領公告と官報掲載、国会通告などの手続きを踏まなくてはならないが、このうちどれひとつまともに守られていない。深夜に急に招集した閣僚会議で大統領がわずか5分間にいくつかの言葉を述べた直後に記者会見形式で談話文を読んだのがすべてだった。明白な手続き違反であり形式違反だ。 戒厳宣布の目的は布告令に明確に表われている。国会と地方議会、政党のすべての政治活動を禁止するのは事実上、国会・地方議会・政党を解散するということだ。非常戒厳は行政機能と司法機能に限って一時的に戒厳司令部の管掌事項に移管するというだけで、立法機能に対してはいかなる措置も規定されていないため明白な違憲だ。すべてのメディア・出版を戒厳司令部の統制下に置くということは自分たちに少しでも不利な情報は検閲を通じて元から封鎖するということだ。 労働者のスト・怠業だけでなく最初から集会自体を禁止して労働者の権利を剥奪し、さらに専攻医をはじめとする医療関係者の無条件現場復帰を命令して戒厳法で処断すると脅迫した。布告令に違反する場合、令状なしで逮捕・拘禁・家宅捜索をして3年以下の懲役に処すと脅した。布告令は国会議員も現行犯で処罰できる道を開いておいた。実際に戒厳軍が出動して国会を奇襲、国会議員逮捕を試みた。 戒厳軍は選挙の公正性確保に向け設置された憲法上の独立機関である中央選挙管理委員会まで奇襲占拠した。憲法と戒厳法に規定された戒厳宣布要件である戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態はその兆候すらなかった。非常戒厳宣布そのものだけでなく布告令の内容とその実行行為の違法性は深刻で重大だ。 今回の事態は大統領が国軍統帥権を不正に乱用して超法規的・不法的に武力を動員し自由民主的基本秩序の破壊を図った事件とみることができる。自由民主的基本秩序の核心要素のひとつが政治的反対派の存在と保護だ。政治的反対派が存在し彼らにメディア・出版・集会・結社のような基本権を保障して対話を通じ問題を解決していくことが自由民主主義体制だ。 政治的反対派を反国家勢力として追い詰めて清算し自分だけが残って専横すると宣言して武力で実行に突入したのは自由民主主義体制の転覆を図ったとみるほかない。憲法裁判所に可能な選択肢は弾劾を認容して罷免する道以外にはないだろう。憲法裁判所の迅速な決定で国政混乱が1日も早く収拾するよう望む。 キム・ソンテク/高麗(コリョ)大学法学専門大学院名誉教授、リセットコリア政治分科委員 ◇外部執筆者のコラムは中央日報の編集方針と異なる場合があります。