瀬戸際に立つASEAN経済、成長へのカギは製造業の生産性向上
順調な発展への瀬戸際に立つASEAN経済
これまでの議論を総括すると、ASEAN経済は今後も順調な発展を遂げられるかの瀬戸際に立っているといえよう。この地域が本格的な「早すぎる脱工業化」に陥ることを回避するためには、サービス・リンク・コストの削減や人材の育成・確保が課題となるが、いずれも一朝一夕でできるものではない。ASEAN各国には不断かつ地道な対応が求められている。 一方、ASEANの成長に注目する日本企業においては、少なくとも同地域の将来について過度な楽観視はすべきでない。ASEAN各国の取り組みとその効果・結果を慎重に見極める必要があるだろう。このような状況でよく生じるのが、日本本社と現地拠点とのASEAN経済に対する認識のギャップである。今後のASEAN経済が再び工業化を進めることに成功し、順調な発展に向けて動き出すにしろ、サブサハラアフリカや南米のように本格的な「早すぎる脱工業化」を迎え、低成長に向かうにしろ、企業グループ全体の経営の舵取りを担う日本本社においては、現地拠点からの声に真摯に耳を傾け、それを慎重に統計等と見合わせたうえで、ASEANのビジネスプランを再構築していく必要がある。
塚田雄太