独り暮らしの高齢者、ふん尿で汚れた環境に猫70匹で飼育崩壊…最期までペットと暮らすための三つの方法とは
ペットと暮らす高齢者は少なくありませんが、認知機能や体力が低下すると、犬や猫などの世話が次第に難しくなってきます。時には、無秩序に繁殖させてしまい、飼育不能になる「多頭飼育崩壊」と呼ばれる状況に陥ってしまうこともあります。高齢者、ペットが共に幸せに暮らすにはどうすればよいのでしょうか。 【写真4枚】体力が落ちたと思ったときに…筋力アップ まずは20秒から
高齢者施設への入居を拒否
人と伴侶動物の関係を研究している横浜国立大学准教授の安野舞子さんによると、超高齢社会になり、犬や猫と暮らしてきた高齢者が、ペットと別れるのをいやがって入院や介護施設への入居を拒否する例が増えているそうです。 猫や犬が増え過ぎて、人も動物も生活が破綻してしまう「多頭飼育崩壊」も近年、大きな社会問題になっていますが、環境省の調査で、その飼い主に高齢者が多いことがわかっています。不妊去勢手術をしていないことが主な原因ですが、背景には飼い主の心身の衰えや経済的な困窮、孤立化などがあります。 2023年11月に相模原市内で発生した多頭飼育崩壊の事例では、独り暮らしの高齢男性の自宅から約70匹の猫が保護されました。ふん尿が処理されない環境で飼われ、ほとんどの猫にノミが寄生していました。近隣住民からは悪臭の苦情も出ていました。飼い主は、過去に不妊去勢手術を受けた猫が体調を悪くしたことがあって以来、手術を受けさせる決断ができなくなってしまったそうです。 安野さんは「ペットの適切な飼育ができなくなれば、結果的に動物虐待に近い事態になりかねない。こうした問題の解決には、高齢者の福祉とペットの福祉、両面からの支援が必要」と指摘します。
動物愛護と社会福祉の連携
環境省は21年に「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」を作成しました。安野さんが22年6月に、自治体の動物愛護管理行政担当部署にアンケート調査したところ、社会福祉部局など多機関との恒常的な連携体制があるのはまだ1割未満でしたが、4割は「検討中」と回答しました。今後、動物愛護と福祉の関係部署の連携強化が期待されます。 安野さんは「責任を持って飼えなくなった時点でペットとの暮らしをあきらめる選択もあると思いますが、心の支えになっているペットと最期まで共に生きたいと願う高齢者には、そういう環境が提供できる社会でありたい」と話します。 高齢者とペットが最期まで共に暮らすための具体的な取り組みとして、安野さんは以下の三つを挙げます。 1)在宅で周囲からのサポートを得る 2)最期までペットと一緒に暮らせる施設に入る 3)ペットを所有せず、保護団体などから預かる形で飼う (読売新聞メディア局 藤田勝)