《歌舞伎町ルポ》「全身血だらけで帰宅」「整形したがる」…トー横キッズの親たちが明かす「我が家の教育法」
売春、飛び降り自殺、市販薬の過剰摂取……。事件や事故が相次ぐ「トー横キッズ」は、決して特殊な家庭で生まれ育ったわけではない。歌舞伎町の社会学を研究する気鋭のライターが、彼らの親に迫った。 【マンガ】追いつめられた女性が「メンズエステ」の世界で味わった「壮絶体験」 取材・文/佐々木チワワ(ライター) ささき・ちわわ/'00年生まれのライター。「歌舞伎町の社会学」を研究している。著書に『ホスト!立ちんぼ!トー横! オーバードーズな人たち~慶應女子大生が歌舞伎町で暮らした700日間~』(講談社)
「真面目に育てたはずなのに」
〈娘の様子がおかしいです。歌舞伎町に出入りを始めてから、未成年なのに酒や煙草に手を出し、リストカットまでするようになってしまいました。 愛情をもって育てたつもりです。原因も解決策もわかりません。助けてもらえないでしょうか〉 Xを通じて、こんなDMが筆者のもとに届いたのは9月上旬のことだった。送り主と会って話を聞いてみると、今年17歳になる娘が「トー横」に入り浸るようになり、悩んでいるという。 筆者は「歌舞伎町の社会学」を研究しており、メディアでも「トー横キッズ」に関する諸問題の解説をしている。 トー横キッズとは、新宿・歌舞伎町の中心にある「シネシティ広場」周辺にたむろする主に10代の少年少女を指す。この一画は新宿東宝ビルの横に位置するため、トー横と呼ばれている。'20年ごろから歌舞伎町に現れ始めた彼らは、TikTokなどのSNSで自らを発信するようになると、マスコミでも報じられるほど認知度が上がった。
「普通の家庭」からも生まれる
こうした報道の多くは未成年飲酒・喫煙や市販薬のオーバードーズ(OD)、違法風俗といった犯罪行為と関連づけられてきた。そして、その裏には彼らを利用する“悪い大人”も蠢いている。今年9月にはトー横を根城にしていた男女が飛び降り自殺を図るなど、いまも事件には事欠かない。 何度か警察の摘発が行われたことで、シネシティ広場にたむろする若者は少なくなった。ところが、場所を移して広場近くのセブンイレブン前に集まっているだけなので、状況は変わっていない。 真っ当に生きてきた自分とは関係ない―そう思う人が大半だろう。ただ、筆者のもとには、そんな「普通の人」からの相談が頻繁に寄せられてくる。それは、トー横キッズの肉親だ。 たいていの親は「真面目に育てたのに」「教育は力を入れていたのに」と、子供がトー横キッズになったことを不思議がる。 それもそのはず、実際に親たちと会って話してみると、彼らが常識的な大人であることがわかる。トー横キッズだからといって荒んだ家庭環境ばかりではないのだ。 ではなぜ、普通の家に生まれ育った子がトー横キッズになってしまうのか。親と子の双方の視点から、その内実を紹介していきたい。なお、相談者のプライバシー保護のため、内容には若干の変更を加えている。