「ガンダムシリーズ」は生涯いくら稼いだ? 今1番熱い…バンダイナムコの経営の凄さ
売れ線時代も…? ガンダム「シリーズ展開の変遷」
さすがにここまでの成功となってくると、スポンサー企業など、周辺企業や関係者による本作への影響も大きくなる。たとえば、富野氏が深く関わっていないとされる『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(1989年)では、マクロスなどで知られる美樹本晴彦氏やガイナックス元社長の山賀博之氏などをアサインし、ヒットを実現している。 そうした中で、F1ブームがあると『機動戦士ガンダムF91』(1991年)、ストリートファイター2をキッカケとした対戦格闘ブームがあると『機動武闘伝Gガンダム』(1994~1995年)と、急激にコマーシャリズムに偏った展開がなされるようになる。 なんとか若い層を取り込み、再びガンダムブームをという焦りがあったり、1994年にサンライズがバンダイ傘下に入ったことも大きかっただろう。 「商業的な要請さえクリアすれば、やりたいようにやれる」という玩具ビジネスをベースで始まった富野氏の物語は、その経済圏や巻き込むものの大きさゆえに、自身の手からも零れ落ちるようになっていく。 彼自身が納得できない方向にどんどん物語やキャラクターを転がされていく皮肉を込めて、『機動戦士Vガンダム』(1993~1994年)には「ヴィクトリー(勝利)」のタイトルを付けた。「『富野さん、いくらなんでもあれはやめてくださいよ。あてつけもひどいじゃないですか』という発言を、本当に待っていたんです」と富野氏は語る(注6)。 『∀ガンダム』(1999~2000年)はそうした世界を全部リセットするためのもので、ガンダムを自分のものとしてとらえず、その時代に発表できる作品だけを作っていこうと決めたのだ。 1979年に生まれたガンダムは、この2024年時点で45周年となる。下の図はこれまでメディアで展開されている主要作品を「ガンダム宇宙世紀」の中でどの時代、どの世界を語っているかをまとめた表だ(表現しきれない要素もあるが、資料をベースに作成)。 富野氏自身はこうした歴史俯瞰を年表視されることを好まないが、四苦八苦さまざまな事情がある中で作為を持ってこうした「リアリティある登場人物たちの歴史の積み重ね」が蓄積され、整合性を持って語れるほどになったシリーズは、日本の中でも稀有な事例だ(小説版はアナザーストーリーになっていたり厳密には不整合もあるが、歴史的検証に十分に耐え得る統一性を保っている)。 注6:富野由悠季.戦争と平和.徳間書店,2002年