「半年で辞めてしまった仕事」も無意味ではない、大切なのは「過去」をきちんと意味づけすること
■過去の「ある」をあらためて意味づける 少し話が大きくなってしまったので、仕事やキャリアに目を移してみましょう。キャリア相談でも、過去を引きずってしまっている人はたくさんいます。 「自分は営業しかしてこなかったから、他にできることがない」 「たいした実績もなく、自分よりすごい人はたくさんいる」 「小さな会社にしか勤めてこなかったので、大企業には入れない」 つい「あのときこうしていれば……」と思ってしまいそうですが、残念ながらやり直しはできません。でも心配しないでください。やり直しはできなくても、これから変化させることは十分に可能です。営業しか経験がないから営業しかできない、というのは思い込みです。
私が行っているキャリア相談では、まずその人にとっての過去の意味づけを変えていきます。つまり過去の価値化です。 有名なマーケターである株式会社刀の森岡毅さんは、破綻した兵庫県の年金保養施設を再建する際に、「ないものはない」と語っています。 山林や温泉以外に何も目玉がないようなロケーションだったのですが、ないものはどうやってもないわけです。ただ、裏を返せば「大自然がある」のだと捉えて、価値化に成功しました。
言葉遊びのように思えるかもしれませんが、意味づけを変えることはできるのですから、まずはそこからやってみましょう。 営業だけやってきたキャリアが“ある” 自分なりにやってきた実績が“ある” 小さな会社に勤めた経験が“ある” 私もそうして、過去を意味づけしてきました。 就職氷河期で就活がうまくいかなかった経験がある。何の実績も出せずにクビ同然になったこともある。職を転々とした経験がある。当時はすごく落ち込みましたし自信もなくしましたが、そんな過去があるからこそ、キャリアに悩む人たちと同じ目線でいられるように思います。
あれもない、これもない、ではなくて、“ある”と意味づけを変えてみてください。そして“ある”ものを、誰との関係性の中で活かすかで、価値は変わるのです。 ■キャリアは永遠に未完成な「β版」 キャリアというと、どうしても履歴書に書ける結果だと思い込んでしまいがちですが、実際は履歴書はプロセスシートです。私はキャリアは「永遠のβ版」だと表現しています。つまり永久に未完成のものということです。 たとえば、かつての転職市場では、短い期間で転職をくり返した経歴はマイナスと捉えられていました。「こらえ性がない」とか「協調性がない」といった評価につながってしまう恐れがあったのですね。