アメリカ大統領選、ドル高批判のトランプ氏勝利でも「円安ドル高基調は変わらない」 来日した大手運用会社ピムコの公共政策調査責任者が予想
アメリカ大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ前大統領が一時の記録的な円安ドル高を「大問題だ」と批判し、勝利した場合には是正に取り組む姿勢を示している。日本は円安ドル高による物価高に苦しめられただけに、トランプ氏が大統領に返り咲く「もしトラ」が起きた場合は円高ドル安へ向かうとの期待感が一部出ている。ところが、来日したアメリカ大手運用会社ピムコの公共政策調査担当の責任者、リビー・キャントリル氏は「円安ドル高基調は変わらない」と否定的な見方を示す。その理由は―。(共同通信前ワシントン支局次長=大塚圭一郎) 【写真】「日銀が利上げ、なのに円安が進んだ…」住宅ローン、金利はどうなる?最近の借入額は、年収の7~10倍のケースも
▽ドル高は「とてつもない障害」とトランプ氏 今年7月上旬に1ドル=162円近くと37年半ぶりの円安ドル高水準を付けたことなどを背景に、トランプ氏は7月16日に報じられたブルームバーグ通信のインタビューで「強いドルに対して弱い円、弱い(中国の)人民元は今や強烈で、私たちは大きな通貨問題を抱えている」と問題視した。 トランプ氏はドル高のために「アメリカの企業がトラクターなどの品目を国外で販売しようとするのにとてつもない障害になっている」と強調。ドル高によって外国で販売するアメリカ製品の利益が減ったり、値上げを迫られて売れ行きが悪くなったりし、ひいては生産拠点がアメリカから国外へ移る〝空洞化〟への危機感をあらわにした。 一方、食品や燃料、原材料などの多くを輸入する日本は円安ドル高による輸入品価格の上昇が物価上昇につながり、家計を圧迫してきた。日本は2022年度の食料自給率が38%、エネルギー自給率が12・6%(原子力発電を国産と見なした場合)にとどまり、それぞれ先進7カ国(G7)で最も低い。
▽トランプ氏勝利でも「円安ドル高基調は変わらない」 このため、トランプ氏が大統領選に勝てばドル安誘導策を打ち出し、物価高が一服するとの期待感が日本でも一部出ている。 円安ドル高による負担増が日本人のアメリカなどへの旅行マインドを冷え込ませている中で、日本旅行業協会の高橋広行会長(JTB会長)は「1ドル=120~130円程度まで円高ドル安が進んでほしい」と話す。 しかし、共同通信などのインタビューに応じたキャントリル氏は、長い目で見た外国為替相場は「トランプ氏が大統領選で勝利した場合でも、円安ドル高基調は変わらない」と否定的な見方を示した。 その理由を2点挙げ、一つは「トランプ氏がアメリカ歴代政権の伝統となってきたドル高志向の政策から逸脱するとは思っていないからだ」と言及した。 キャントリル氏は「通貨の価値はその国の経済状況を反映する」とし、アメリカは世界の基軸通貨であるドルが強いことを志向してきたと指摘。「トランプ氏と一部の助言役もドル高志向の政策を続けることを明示している」との見方を示した。