アメリカ大統領選、ドル高批判のトランプ氏勝利でも「円安ドル高基調は変わらない」 来日した大手運用会社ピムコの公共政策調査責任者が予想
加えてキャントリル氏は「トランプ氏が大統領になれば規制緩和に取り組むなど、(企業に)よりビジネスフレンドリーな形になる」ことも見落とせないと話した。規制緩和や企業の法人税減税といった政策が実施されれば経済活動が過熱して物価を押し上げる要因となり、それもFRBの利下げを阻むことになりかねない。 こうした点を踏まえ、トランプ氏の勝利は「ドル高基調をもたらす」とキャントリル氏は分析する。 ▽財務長官の有力候補が就任ならば? 一方、第2次トランプ政権が発足した場合には、財務長官への就任が有力視されているロバート・ライトハイザー前通商代表部(USTR)代表がドル高に否定的な考えを示していることから「ドル安誘導策を進めるのではないか」との観測もある。 ライトハイザー氏は2023年に出版された著書『ノー・トレード・イズ・フリー(いかなる貿易も自由ではない)』で、ドルが円や中国の元に対して高いのは「アメリカの通貨がかなり過大評価されていることは明白だ」と主張。ドル高がアメリカの農業や製造業の輸出競争力を阻害していると批判した。
キャントリル氏は「ライトハイザー氏はあくまでも彼の見解であることを明確にしている」とし、トランプ陣営内でドル安誘導を進めるとの認識を共有しているわけではないとの認識を示した。 ▽「もしトラ」が起こるかどうかは不透明 もっとも、キャントリル氏は「もしトラ」が起こるかどうかも不透明だとくぎを刺す。「ジョー・バイデン大統領が民主党候補だった時はトランプ氏が優勢だと予想していたが、バイデン氏が撤退してカマラ・ハリス副大統領が民主党候補になってからはトランプ氏と互角の戦いになった」と話す。 ただ、トランプ氏が返り咲けば「史上最悪のアメリカ大統領だ」と批判するバイデン氏の政策を大きく見直し、円の対ドル相場が左右されるのは必至だ。大統領選の行方とともに、為替の動向も手に汗を握る展開が続きそうだ。 【リビー・キャントリル(LIBBY CANTRILL)氏】アメリカ連邦議会下院の立法担当助手、金融大手モルガン・スタンレーの投資銀行部門を経て、2007年にピムコ入社。政治や政策のリスクを分析し、投資家に助言する公共政策調査担当の責任者を務める。アメリカの証券アナリスト資格「CFA」を持ち、CNBCテレビの経済情報番組に出演も。