アメリカ大統領選、ドル高批判のトランプ氏勝利でも「円安ドル高基調は変わらない」 来日した大手運用会社ピムコの公共政策調査責任者が予想
2点目は「仮にトランプ氏がドル安に誘導することを望んだとしても、大統領が実際にそれを実現できる手段は非常に限られているからだ」と説明した。 外国為替市場でドルの交換レートがどのように動くのかは「アメリカの経済成長とインフレ(物価上昇率)の動向、そして独立した中央銀行の動きなどによって決まる」とし、大統領の介入余地は限定的だと説いた。 ▽金利差が円安ドル高を招く 記録的な円安ドル高が進んだ背景には、日本とアメリカのそれぞれの中央銀行が設定している政策金利の差が大きいことがあった。投機筋はアメリカの金利の方が日本よりはるかに高いため、運用するのに有利なドルを買って円を売る動きを強めてきた。 アメリカでは新型コロナウイルス禍後の経済再開で物価が上がり続けるインフレが深刻化し、2022年6月には消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率が9・1%と40年7カ月ぶりの大きさとなった。
物価高を押さえ込むためにアメリカの中銀に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は経済活動を冷やすことを目指して主要政策金利を段階的に引き上げ、現在は5・25~5・5%に達している。 これに対し、日本の中銀に当たる日本銀行はマイナス金利を2016年から今年3月まで続けていた。民間の金融機関が日銀に預ける預金の一部にマイナス0・1%の金利を課し、日銀が利子を取るという「異例の金融政策」(エコノミスト)が長期化していた。 ▽金融政策は円買いを促す だが、今後は日本とアメリカの金融政策の方向性の違いから両国の金利差が縮小し、それ自体は円買いドル売りを促す公算が大きい。 日銀は今年3月の金融政策決定会合でマイナス金利を解除することを決定し、政策金利の無担保コール翌日物金利の誘導目標を0~0・1%程度に設定した。続いて7月31日の会合で0・25%程度へ引き上げることを決めた。 植田和男総裁は7月31日の記者会見で「経済、物価の情勢が私どもの見通しに沿って動いていけば、引き続き金利を上げていく考えだ」とも語った。