2025年政治展望:石破政権を待つ7つの壁、しくじれば崖の下へ
新しい政治秩序ができるか
外の壁もある。外交である。昨年11月の南米訪問のあとに接触を模索したものの実現しなかったトランプ次期米大統領との関係にはじまり、外交舞台での石破の振る舞いも首脳外交に不安を残した。中国の対日姿勢は経済の悪化を背景に態度がやや軟化しているとはいえ、韓国情勢は流動化し、ロシアと北朝鮮が連携を強めるなど、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。 安倍―トランプ、岸田―バイデン、尹錫悦(ユン・ソンニョル)といった首脳の信頼関係による外交を見せられてきただけに、外交手腕が未知数の石破には懸念がつきまとっている。 少数与党政権になって自民党一強だった政治の秩序が崩れた。1955年の結党以来、自民党は93年の細川護熙連立内閣、2009年の民主党内閣と二度にわたって政権の座から離れたものの、しぶとく復帰し維持してきた。その自民党政治のあり方の一大転機が訪れている。 25年は昭和100年、戦後80年、自民党70年と節目の年である。24年10月の衆院選の結果がもたらした変化は、石破政権の命運にとどまらず、日本政治のゆくえをも大きく左右するものとなっている。政権のあり方をはじめとして25年にどこまで新しい政治秩序ができるのかどうか。混乱と模索がつづくことになるのだろう。(敬称略)
【Profile】
芹川 洋一 日本経済新聞社客員編集委員。1950年熊本県生まれ。東京大学法学部卒業・新聞研究所教育部修了後、76年に日本経済新聞入社。政治部長、大阪編集局長、論説委員長、論説フェローを歴任。東海大学客員教授。2019年度日本記者クラブ賞受賞。著書に『平成政権史』(18年)、『宏池会政権の軌跡』(23年)など。24年より現職。