2025年政治展望:石破政権を待つ7つの壁、しくじれば崖の下へ
少数与党だから延命する「孤独な宰相」
以上4つすべての壁を巧みに乗り越えて崖下に落ちることなく、石破政権が夏以降もつづくという道筋を描くのはそう簡単ではない。というのは内なる2つの壁がそれを阻む要因になるとみられるからだ。 内なる第1の壁は「首相官邸の孤独」から来るものだ。官邸主導で政策を進めるためには、首相のもとに強力なチームをつくってリーダーシップを発揮していく必要がある。第2次安倍政権が7年8カ月の長期に及んだのは菅義偉官房長官(当時)らによるチーム力によるところが大きかった。岸田文雄内閣の場合も木原誠二官房副長官(同)らが首相の意向を踏まえて動いた。 石破政権では、石破と同じ鳥取県選出で経済再生相の赤沢亮正が側近として、官邸内に部屋まで設け、補佐役を任じているが、経済財政から防災庁設置準備、賃金向上など閣僚として多くを担当。岸田のときの木原のような役回りは無理だ。解散した石破派のメンバーが政権を取ってから再結集することもなく、周辺には人的な厚みがない。 内なる第2の壁はいうまでもないが「自民党内の孤独」から来るものだ。石破を積極的に支える勢力はどこにもない。総裁選の決選投票で石破が選出された経緯を思いおこすとわかる。直面する野田佳彦の立民との選挙戦や外交関係を考えたとき、高市早苗ではまずい、と判断した旧岸田派や菅グループなどの面々が石破を押し上げた結果で、石破総裁は消極的選択でしかなかった。 党運営の責任者である幹事長の森山裕は派閥の領袖ではあったが、メンバーが一桁の小グループで、その手腕についても疑問視する向きが出はじめている。しかも旧安倍派を中心とする高市支持グループはもちろん、派閥を率いる麻生太郎、茂木敏充も石破に明確に距離を置く。 しかし石破を代えたところで少数与党政権の現実は変わらない。枠組みに変化がない限り、だれが担当しても政権はうまく回らない。政治権力の妙味でもあるが、奇妙なパワーバランスの上で石破政権が持ちこたえているわけだ。 25年度予算の成立までは石破で走り、その先は折をみて揺さぶるか、かりに参院選も自民党の旗色が悪いようであれば現体制で選挙に臨み、すべてを石破にかぶせて引責辞任させるか。そんな「石破使い捨て」を策し、虎視眈々(たんたん)と機会をうかがっている党内の壁の厚さは相当なものだ。