ブロックチェーン、暗号資産、スタートアップ:ビル・タイが描く未来
私には会いたい憧れの人が何人かいるのだが、そのうちの一人が今回取材したビル・タイだ。Zoom、Canva、Treasure Dataのエンジェル投資家である彼を初めて見たのは2021年ニューヨークのNFT NYC カンファレンスのステージ上だ。 ”金融界のダボス会議” と言われる「ミルケン・インスティチュート」に2021年、ロシアのパンクバンドPussy Riotのナジェージダ・トロコンニコワを招待し、彼女がNFTを活用して資金調達し、政治・人権問題に対する戦いを続けていることを金融界の第一人者たちに直接伝えたという事例をNFT NYCのステージ上で紹介した彼に、私は衝撃を受けた。トロコンニコワはロシアでの抑圧に対抗し、NFTを通じて自由と表現の権利を守るメッセージを世界に広めていたのだが、権威ある金融世界会議にパンクバンドの女性を連れていくその態度、目の付け所に感動したのだ。どのような思考でビル・タイは世界を見ているのだろう? 彼の生き様から見えてきた姿は「パンクでありハッカーである姿勢」だ。取材をしながら、Bitcoinの生みの親、サトシ・ナカモトもビル・タイから影響を受けているのではないか?という仮説が頭をよぎった。 待ち合わせの場所に入ってきた時にまず目についたのは彼の特徴的なテンガロンハット。と、同時にDIYスタイルのスマートウォッチも気になる。それは何?と聞いたらClockstarを検索してみて、というので検索してみたら学研の米国版に当たるCircuitMessのサイトが出てきた。DIYでスマートウォッチだけではなく、ゲームボーイのようなゲームデバイスやラジコンも作れるキットが毎月送られてくるという。 サイトを見ながら私が興奮していると、ビル・タイは彼が電気工学に触れた幼少期のストーリーを教えてくれた。 彼が9歳の誕生日に、アメリカの電子機器販売店RadioShackで売られていた「100 in 1 エレクトロニクスプロジェクトキット」を買ってもらったことが、ビル・タイが機械工学やエンジニアリングに興味を持つきっかけとなった。このキットには番号付きのバネがついており、たとえば「バネ3とバネ8を繋ぎ、次にバネ9と13を繋げる」といった手順に沿って、バネを曲げワイヤーを接続するだけで、トランジスタラジオが簡単に作れる仕組み。彼は子供の頃、このキットを通じて多くの興味深いことを学んだという。