ブロックチェーン、暗号資産、スタートアップ:ビル・タイが描く未来
無料で長距離電話をかける実験を繰り返す
13歳の時、『Secrets of the Little Blue Box(小さなブルーボックスの秘密)』という記事を読んだことで、ネットワーク技術に興味を持ち始めたそうだ。この「ブルーボックス」は、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックがAppleを創業する前に販売していたことで有名なデバイスである。 当時、アメリカの電話システムは一連のコンピュータスイッチで制御されており、これらのシステムは2600ヘルツの周波数を使って通信していた。1970年代、何人かの若者たちは、電話ボックスでクォーターコインを入れ、1-800の無料通話を発信した後、他の人が電話を切ると、2600ヘルツの音を電話の受話器に流すことで電話システムを操作し、無料で長距離電話をかける方法を発見した。これは、当時の長距離通話が1分3ドルもかかった時代に非常に注目された手法だった。 さらに、コンピューターサイエンティストであるジョン・T・ドレイパー、通称「キャプテン・クランチ」が、アメリカのシリアル「キャプテン・クランチ」のオマケのおもちゃの笛が偶然にも2600ヘルツの音を出すことを発見し、その笛を使って無料で電話をかけられるようにしたという話が記事で紹介されていた。このエピソードは当時のハッキング文化やテクノロジーへの関心を象徴するものとなっている。 ビル・タイはその記事に夢中になり、RadioShackのキットを解体して周波数2600ヘルツのシンセサイザーを作り、電話ボックスで実験を繰り返した。これが彼のエレクトロニクスへの探求心を引き出すきっかけとなった。 その後、彼は電気技師となり、コンピュータチップの設計を学んだ。80年代には自作PCを作り、Intelのマイクロプロセッサやグラフィックスカード、DRAM、ディスクドライブコントローラーを組み合わせて、PCを構築した。その後、コンピュータチップの設計からネットワーキングへと事業を拡大し、90年代にはiAsiaWorksを創業し、インターネットサービスプロバイダー(ISP)を設立。この事業はデータセンタービジネスへと成長し、2000年にIPOを達成している。 このビル・タイのサクセスストーリーは、シリコンバレーでは広く知られている。 私にとってはその後の投資家としての彼のサクセスストーリーも興味あるが、冒頭で述べたNFTカンファレンス登壇、ブロックチェーンへの関心もとても気になっている。 彼にそのことを伝えると、ICチップ、ネットワーク、インターフェース、データサイエンスの延長上にブロックチェーン / 暗号通貨を見ているという。彼のブロックチェーン、暗号資産との繋がりのストーリーは「セカンドライフ(Second Life)」から始まった。セカンドライフは、2003年に登場したオンライン仮想世界で、ユーザーがアバターを作成し、自由に探索や交流、経済活動ができるプラットフォームである。仮想通貨Lindenドルを使った経済圏が形成され、ユーザーが作り出すコンテンツによって仮想社会が発展している。