注目のミュージシャン、クレア・ラウジーが奏でる「エモ・アンビエント」 ジャンルに縛られない音楽づくり
クレア:そうですね。前に何かで、エリオット・スミスのセカンド・アルバム(「Elliott Smith」、1995年)のレコーディングの話を読んだことがあって。友達の家を借りてレコーディングしていた時に、他の部屋やアパートからの音が入ってしまうため録音が中断されることがあって、タイミングを待たなければならなかったそうで。だから彼らの音楽には、周りの音とか生活の雑音とかがそのまま混ざっていて、外の世界とのつながりがすごく感じられるというか、自分だけの時間じゃなくて、周りの人の時間を共有してるような感覚があって。それって、彼らが自分の人生を音楽にぶつけているってことなんだと思う。そして、スパークルホースやキャット・パワーも、自分が好きなアーティストの作品にはそうした感覚を先取りしていたところがあったように思います。「sentiment」をつくっている時も同じような感覚があって――世界から切り離されていながら、少しだけつながっているような、そんな風に感じるところがあったんです。
「ヴェイパーウェイヴ」と「ハイパーポップ」
――ところで、クレアさんは「ヴェイパーウェイヴ(Vaporwave)」って聴いていたりしましたか。というのも、以前クレアさんがモア・イーズと共作した「Never Stop Texting Me」のリリース元である「Orange Milk」はヴェイパーウェイヴの総本山的なレーベルだったこともあり、興味の対象だったりしたところもあるのかなと思って。
クレア:面白いと思う。実際、あのアルバムをつくっている間は「Orange Milk」の作品をよく聴いていました。でも、ヴェイパーウェイヴ全般がっていうよりは、「Orange Milk」が好きって感じかな。ただ時々、彼らが新しい作品を出すと、「あ、これはちょっと〈Orange Milk〉すぎるな」って思うことがあって(笑)。中にはカオス過ぎて自分にはついていけないと思うような作品もある。あちこちから同時にすごく抽象的な音が飛び込んできて、誰かにベッドルームをめちゃくちゃにされているような感覚というか(笑)。レーベルの共同運営のセス(・グラハム)とはとても仲が良くて、会うたびに新しい音楽をいろいろ教えてくれます。