望まぬ延命治療なぜ起きる?「高齢者救急」現場の課題は?“日頃から意思表示”の重要性を専門家が指摘
■本人の意思表示と情報共有の重要性
心臓が止まった時に患者本人の表明意思に沿って、心臓マッサージなど心肺蘇生法を行わないことを表す、「DNAR(do not attempt resuscitation)」という言葉がある。 真弓氏は、DNARの意思がある場合について「例えば、家族が慌てて救急車を呼んだとしても、救急隊員は家族にDNARの意思表示があるかを確認する。意思表示があった場合は、救急隊員がかかりつけ医に連絡をして引き継ぐというシステムがある」と語った。「かかりつけ医と連絡が取れない場合は病院に運ばれる」としつつも「東京都では93%がかかりつけ医と連絡が取れているという実績がある」と続けた。 その上で、自らの意思が病気や事故で伝えられなくなった時に備え「家族やかかりつけ医、ケアマネージャーなどと、将来の治療やケアについて話し合う“アドバンス・ケア・プランニング(ACP)”を事前にしていただくことが大事」との見方を示した。 「以前は、医療に関する事前指示書を用意している人がいたが、タンスの中にしまってあり、家族やかかりつけ医がそれに気づかないケースもあった。そのため、事前に話し合いをしておくというプロセスが重要となる」と改めて強調した。 さらに、マイナンバーカードの有用性を挙げて「患者が普段服用している薬や、保険の加入状況、ケアマネージャーの関与といった様々な情報が詰まっている」としつつ「患者が意識不明の場合でも情報を読み取ることは可能だ」と説明した。
今回の提言書はインターネットで閲覧が可能だ。日頃の話し合いだけでなく、#7119(救急安心センター事業)やQ助(全国版救急受診アプリ)など緊急時に相談できる公的手段の確認も促している。(https://jxiv.jst.go.jp/index.php/jxiv/preprint/view/998)
■超高齢化社会における医療費増大の問題も
高齢者救急のほか、高齢者の増加に伴い医療費の増大や医療ひっ迫の問題も避けられない課題だ。 医療費の増大について真弓氏は「高齢になると病気にかかりやすくなるため、高齢化が進むことで、医療費は当然増える。最近の新薬は非常に高額で、1本に数百万円もかかるような薬さえ出ている」と語る。 また、「医療費は高くならざるを得ないが、それに対して政府がこれまで通りの医療費でやっていこうとすること自体無理がある。そのため政府としては、急性期病院のベッドを減らして、慢性期病院やリハビリ病院を増やそうと動いている」と説明した。 そうした背景がある中でも「現場としては、非常に苦労している状況だ」と訴えた。 (『ABEMA Prime』より)