BリーグでのHC経験を引っ提げ、韓国バスケ界初の日本人コーチに就任した森山知広の挑戦(前編)「何かを変えなければいけない」
充実の練習環境と驚きのVIP待遇
──新生活には慣れましたか? 言葉の壁はもちろんありますが、食事もおいしいですし、なんとか。時々出汁の味が恋しくなりますけど(笑)。 ──聞くところによると、チームの施設が素晴らしいそうですね。 そうなんです。体育館、ウエイトルーム、お風呂、ミーティングルーム、食堂、なんでも揃っていますね。1階に練習場やお風呂などがあって、2階はウエイトルームと居住スペース。選手もコーチもスタッフも施設内の個室に住み込んでいます。 ──選手たちの生活スケジュールはどんな感じなんですか? 9時半からお昼までチームでトレーニングを行い、昼食後は部屋で休憩。15時半からチーム練習を行い、夕食後はケア、トレーニング、自主練習など各自が自由に過ごしています。7時半からシューティングをしている選手もいますね。 ──ハードですね。韓国では当たり前のカルチャーなんでしょうか。 どこのチームも似たような感じみたいですよ。ウエイトも毎日やりますし、Bリーグの感覚だと「オーバーワークなんじゃないの?」と思ってしまうくらい練習しています。WKBLは今年からアジアクォーター制、いわゆる『アジア枠』ができて、ウチには元山梨(クィーンビーズ)の石田悠月がいますが、最初の2~3週間はトレーニングの量や練習時間の長さに慣れず苦労したと話していました。 ──アジア枠が解禁されたことで日本の女子バスケットボール選手の可能性が広がったと思われますか? 待遇面はすごく良いと思いますよ。アジア枠の選手は月給1000万ウォン(約111万円)。衣食住が全部施設内で完結するし、1日に外に出ないで練習に励むこともしょっちゅうなので、お金を使うタイミングはかなり限られますし(笑)。 びっくりしたのが、遠征に行った時にチームのチャットグループに「おやつの時間です。今日はスターバックスなので、欲しいメニューを◯時までにここに投稿してください」っていうメッセージが届いて、「じゃあカフェラテを」って送ったらホテルの部屋にカフェラテが届いていました(笑)。 ──VIP待遇ですね…。 ちなみに今日はワッフルでした(笑)。こんなこと日本ではないですよね。最初は本当に訳がわからなかったんですけど、しばらく過ごしていくうちに、なんとなく理由がわかりました。韓国ってバスケットボール選手がすごく少ないんですよ。 ──と言いますと? そもそも女子バスケ部がある高校が国内に16とか18くらいしかない上に、どのチームもメンバーが10人以下。その少ない選手からアンダー18のメンバーを選んで、さらにそこから6チームがピックアップするわけです。選手の供給が追いついていない状態だから選手がすごく大切にされているのかなと思っています。
取材=古後登志夫 構成=青木美帆