BリーグでのHC経験を引っ提げ、韓国バスケ界初の日本人コーチに就任した森山知広の挑戦(前編)「何かを変えなければいけない」
思わぬ形で繋がった韓国との縁
ライジング福岡(現ライジングゼファー福岡)、福島ファイヤーボンズ、神戸ストークスでヘッドコーチを歴任した森山知広が、韓国女子リーグWKBLに所属する『ハナ銀行女子バスケットボール団』のコーチに就任した。韓国男女バスケ界において日本人がコーチに就任するのは史上初となる。海を飛び越えて新たなチャレンジに踏み切った理由と、果たそうとしている使命、あまり知られていないWKBLの環境や韓国のバスケットボール文化までざっくばらんに話を聞いた。 ──まずは、日本を離れるという決断に踏み切られた理由からうかがえますか? ストークスでの初年度となった2022-23シーズンは、プレーオフに進出したものの3位に終わり、2年目の2023-24シーズンは1ゴールの得失点差でプレーオフ進出を逃しました。このような結果を受けて、自分の中で何かを変えなければいけないと思ったのが一番大きな理由です。 さらに、「プレミアに所属するクラブで力を振るうために、あと2シーズンをどう過ごせばいいか?」と考え、B2以外…B1はもちろんB3も含めた新しい環境に身を置いてみたいと考え、ツテをたどりながらいろいろな可能性を模索していました。 ──韓国との縁が繋がったのはどういう経緯だったのでしょう? 6月にS級ライセンスの海外研修で韓国に行ったとき、ハナ銀行から「新しい人材を求めているけど興味はありますか?」とお誘いをいただきました。新しい環境でバスケを学びたい、経験を生かせる場所で求められて仕事をしたいと思っていたので、願ってもないオファーでした。 実は研修に行く少し前に、他の韓国のチームからもオファーがあったんですが、タイミング的な問題もあって頓挫してしまっていたんです。研修が終わったらまたチームを探さないといけないなと思っていたところだったので、ありがたかったですね。研修を終えて帰国し、家族と話し合い、正式にお返事させていただきました。 ──海外に渡る上で、大変だったことはありますか? それは何より、ビザの取得です。ヘッドコーチやGMをやっている時、外国籍のビザがなかなか出なくて「なんでこんなに遅いんだ」って思っていたんですけど、いざ自分がその立場になってみたらまあ出ない(笑)。7月末には合流する予定でいたんですけど、結局2週間くらい遅れました。 そのときばかりは「本当に行けるのかな」と不安になりましたけど、家族の理解もありましたし、面白いことにチャレンジできるというワクワクのほうが強かったですね。WKBLってこれまで韓国人以外のコーチが在籍していなくて、私が史上初の外国人コーチなんだそうです。 ──そうなんですか! はい。KBL(韓国男子プロリーグ)には外国人コーチがいるんですけど、日本人に限定すると男女通して初だそうです。韓国バスケットボール界はそもそも、韓国のプロ選手がコーチに転身するのが慣習になっていて、私のようにプロキャリアなしでヘッドコーチになった人、ヘッドコーチからアシスタントに転じる人はかなり目新しいようです。パイオニアじゃないですけど、「日本人初」であることにワクワクする気持ちが結構大きかったですね。