債券トークン市場が急拡大のからくり──強い米国債とドルで「ステーブルコイン2.0」はアジアを狙う
金利上昇で勢いづいた高利回りトークン化ファンドの開発
2008年の世界金融危機以降、金融緩和政策を続けてきた米国は2022年3月に利上げに踏み切り、世界は「金利のある時代」へと戻った。 資産(RWA)のトークン化が進む一方で、高利回りのトークン化商品は、ウォール街をけん引する米資産運用会社にとっても放っておくことのできない運用商品と化したというわけだ。 ブラックロックの「BUIDL」に預け入れられた資産(TVL=Total Value Locked)は現在までに、5億ドル(約733億円)に増加(DeFiLlamaのデータ)。そのBUIDLの原資産である米国債の利回りは、過去5年で大幅に上昇した。債券市場の指標である10年債の利回りは、現在約3.9%。2019年9月は1.6%前後だった。 この「トークン化債券市場」をリードしようとしている新興企業が、2021年に創業した Ondo Financeだ。社名の「Ondo」は、1880年代に人工的に作られたエスペラント語の「波=wave」を意味している。共同創業者のネイサン・オールマン(Nathan Allman)氏は、Ondoを起業するまでゴールドマン・サックスに勤務してきた人物だ。 Ondoが開発した看板商品は2つあるが、その1つは2023年に運用を始めた「OUSG」の名で知られるトークン化されたファンドだ。正式名称は「Ondo 米国債ファンド(Ondo US Government Bond Fund)」。 OUSGは、資金の5割以上をブラックロックのBUIDLに投資しているのが特徴で、他にも、ブラックロックのファンドで、主に米国債が原資産の「BlackRock FedFund」や銀行預金、米サークルが発行する米ドル建てステーブルコイン「USDC」がOUSGのファンドポートフォリオを構成している。 データ分析の「rwa.xyz」によると、Ondoが運用するOUSGの資産残高は現在、2.21億ドル(約324億円)。 Ondo Financeで最高戦略責任者(CSO)を務めるイアン・デ・ボーデ(Ian De Bode)氏は、「(チェーン上で形成されるトークン市場では)米ドルと現金等価資産に対する需要が全体的に伸びてきた。その代表的なものが米ドルに連動するステーブルコインであることは言うまでもない」と、米国を代表する資産をトークン化するブームの背景を説明する。「やがて、現金同等資産である米国債をトークン化したプロダクトが生まれ、それに対する需要が高まっていることは自然な成り行きだ」