肌を守るためがん手術を拒否する「全身刺青男」、和彫りの虎を背負う「アメリカ人女性」…「入れ墨は反社の証」という批判に愛好家が伝えたいこと
スポーツジムと刺青
「勇敢でありたい」との願いを込めて、アニーさんは虎の刺青を背中一面に入れた。アメリカと違って、日本では刺青に対する大衆の評価が芳しくないこともあって、彼女は隠せるところにだけ刺青を入れることにしていた。東京の大学院で学位取得後に仕事の関係で、韓国で生活するようになると、日本との刺青文化の違いに触れるようになる。 「昔は日本みたいに刺青に偏見を持つ人もいたそうですけど、今の韓国では若者世代を中心にファッションの一部として刺青は人気があり、首とか顔とか、わざと見える部分に刺青を入れる人も多いですよ。刺青が見えたままプールで泳ぐことも普通にできます。誰からも白い目で見られることはありません」(アニーさん) また日本ではまさに伝統的な刺青の雰囲気が漂う柄や模様が主流だが、韓国では限りなく実写や実物に近づけた柄や模様が人気とのこと。やがて東京に戻ったアニーさんは、韓国の頃と同じようにジムのプールに行くことにしたが、日本では「刺青お断り」のルールによって拒否されてしまう。 交渉の末、全身を隠せるスイミングスーツを着用してならプールへの立ち入りを許可するという条件付きでの入会状況となった。アニーさんは、ジム側からの条件をすべてクリアしたが、ジムのスタッフたちはアニーさんに対して、まるで「来るなよ」と言わんばかりの冷ややかな対応をとり続けたせいで、アニーさんはプールに行けなくなってしまった。
見た目で判断する日本文化
「日本では、刺青=反社というイメージが強すぎると思います。日本人はこうやって一方的な偏見でお互いを縛り合うことで自由や人生の楽しさを狭めてしまっているような気がします。刺青を入れてる人って、刺青という趣味に没頭してるって言うか、信念的に生きてるって言うか、とにかく結構気さくでスローライフ志向の人も多いんですけどね」(アニーさん) アニーさんは「私の周りで言うと、刺青をしていない人は人のことを見た目だけですぐに判断して、プライベートでも仕事でもたくさんの出会いや様々なチャンスを失っています」と指摘する。 「日本の職場でコミュニケーション不足が原因のミスが多発していることなどは、見た目ですぐに判断する文化も影響を与えているのではないでしょうか。刺青をしている人だと、相手の刺青を見た時に『この刺青の意味は何だろう?』とか、お互いに反社の人たちと区別するためにも『人は話してみないと分からない』って考えています。偏見なく一歩ずつ歩み寄って確認することに慣れています。たとえ相手の全てを理解することはできなくても、ちょっとでも互いのことを理解しようとしていれば、お互いの良さを導き合うこともできます。その結果、お互いのミスをカバーし合うこともできるのです」