肌を守るためがん手術を拒否する「全身刺青男」、和彫りの虎を背負う「アメリカ人女性」…「入れ墨は反社の証」という批判に愛好家が伝えたいこと
死後は剥製を希望
「刺青がある肌にメスやレーザーを入れれば当然、刺青の形が変わってしまいます。私にとって刺青は『魂』と『愛』ですからそれを変えるわけにはいきませんでした。むしろ手術をしないで『がんと勝負しよう!』と思いました。『闘うぞ!』ってね。これまで刺青のお陰で頑張ってこられたんで、これからはこの刺青を守って刺青に恩返しするつもりで、もっと頑張っていこう、って思ったんです。だから私の闘病は魂と愛を守り抜く信念の闘いなんです!」(熱海さん) 今でも友人たちから手術を勧められるが、熱海さんは己の「魂」と「愛」を貫き続けている。そして、医者も驚くほど熱海さんは元気溌剌としている。 「あくまでも手術をしない自分に、友人たちは『意固地になってるだけだ』って言ったりもするんですけど、もし私が死んだら、どこかの研究機関や医療機関で、私の皮膚を剥ぎ取ってもらって『全身刺青の皮膚の剥製』として研究などに役立ててもらえたらいいなって思っています」(熱海さん) 熱海さんは「剥製という新しい目標も生まれたので、絶対にメスは入れません」と笑顔で話す。まさに不退転の決意をもって闘病生活を送っている。そして、背中に彫られた騎龍観音のように人々に恵みをもたらしたい思いで、自分と同じように闘病している人々を励ましたいとも言う。
大学院と刺青
「世の中には、闘病中の人が沢山いて、それぞれが抱えている病気の種類は違うでしょうけど、闘病していることに変わりはないと思います。私のやり方が正しいかどうかは分かりませんけど、私は刺青で頑張ります。闘病中の方々も、あなたなりの『魂』と『愛』を以って信念を貫いてほしい。みんなで頑張って行きましょう!」 そうエールを送る熱海さんの口元や唇にもしっかりと刺青が彫られていた。元気いっぱいの熱海さんの刺青仲間に、シカゴ在住のアニーさん(30)というアメリカ人女性がいる。彼女の背中には和彫りの「虎」が彫られてある。 彼女が18歳の時に、人種差別に苦しんだ親友の在米日本人が自殺したのがきっかけとなってアニーさんは「自分にとって大切なものを残す」という想いで最初の刺青を彫った。それから刺青そのものにもっと興味を持つようになったそうである。 アメリカでは、タトゥーを入れる際は、電動のタトゥーマシンを使用するのが一般的で、日本の様に彫り師が刺し棒や針を使って手彫りで入れることはない。 手彫りによる日本の刺青の資料を見漁っているうちに「日本の刺青は美しい」と感銘を受けたアニーさんは、東京にある某大学院に進学するのに合わせて日本での生活をスタートさせて、念願だった手彫りによる刺青を背中に彫ることにした。