現役米海兵を”秒殺”TKOで再起した元貴ノ富士のスダリオ剛に「元力士は総合格闘技で成功しない」のジンクスを覆す予感
この日の早朝に、ラスベガスの「クートゥアジム」でスパーリングやアドバイスを受けていたティム・ジョンソンがベラトールのロシア大会で、あの“皇帝”エメリヤーエンコ・ヒョードルに挑み、右フックを浴びてKO負けした。スダリオが目を覚ましたら試合は終わっていて、SNSのフラッシュ動画で結果を知ったという。 「本当にお世話になった同じチームだったのでショックでした」 その恩人の無念をRIZINリングでの力に変えた。 「ほっとしている。でも、まだまだぶっちゃけ出せていない。ハードトレを(米国で)毎日やってきたことが自信になって、どういう展開になっても大丈夫だろうと強い気持ちでいけた」 確実に強くなっている。 プロデビュー3戦目にして初黒星を喫したSAINTはスダリオを称賛した。 「私がミスをしてしまった。スダリオは、ベリーストロングファイターだ。アメリカ合宿の勢いを持ってくると思っていたが、本当に強い選手だった」 その肉体も、すっかり相撲取りから総合格闘家仕様へと変貌を遂げた。124キロで渡米したが、帰国時には、115キロにシェイプアップされていた。 大好きな”スイーツ断ち”をして肉体を改造。もともと体脂肪は、17パーセントに抑えていたが、さらに低くなっている可能性があるという。パワーに加え、俊敏さとスピードがついてきた。 榊原CEOも「スダリオはシビサイに負けた悔しさを持って渡米して、しっかりとトレーニングをしてきた。ヘビー級も、今後力を入れていけたらいいと思う大会だった」と評価した。大晦日大会への参戦も確実だろう。 スダリオが求めるターゲットは、当然、シビサイとのリベンジマッチかと思われたが、意外なコメントを口にした。 「(シビサイ戦は)すぐには無理だろうと思っていて。リベンジには、そこまで固執していない。国境が開けば、海外選手と優先的にやりたい」 新型コロナの感染が減少傾向にあるため、今後、海外選手の招聘が緩和される可能性もある。 格闘界では、大相撲力士“喧嘩最強伝説“が根強くあるが、過去に角界からの総合格闘家への転向で成功した例は、ほとんどない。ボブ・サップにリングに這わされた元横綱の曙に始まり、戦闘竜、把瑠都、大砂嵐と元力士の多くがスタミナ不足と総合の技術を習得できずに伸び悩んだ。だが、元総合格闘家のエンセン井上氏の指導を受けながら、着実に成長しているスダリオには、それらの相撲力士特有のウイークポイントを克服できる可能性がある。スダリオは「大相撲出身の選手は成功しない」のジンクスを覆すかもしれない。