「まだまだ弱いんだなと…」世代交代の過程で苦闘を続けるSAGA久光スプリングス 気丈な24歳ミドルブロッカーが流した涙の意味
頂点までの、あと1セットが遠かった―。12月21日にAsueアリーナ大阪で行われたバレーボールの天皇杯・皇后杯全日本選手権女子決勝。3大会ぶりの優勝を狙ったSAGA久光スプリングスはヴィクトリーナ姫路とのSVリーグ勢による大一番に敗れた。 ■新ユニホームで3人娘がかわいい~~ポーズ【写真】 試合後の表彰式は、敗者にとってつらい時間だ。コートのネットを挟んだ勝者とのコントラストが際立ち、銀メダルを首にかけた選手たちに笑顔はない。2大会続けての準優勝。ミドルブロッカーの平山詩嫣(24)は現実を受け入れるように、淡々と口にした。 「私たちには『勝っている経験』と『勝ちにいく姿勢』が足りません。それを得るためのトーナメント戦にしたかった。(初戦の2回戦から)乗り越えて頑張ってきた分、自分たちの力が本物かどうか、今日は試される試合でした。まだまだ弱いんだなと…」
一目もはばからず見せた「弱さ」
敗戦の直後、コート上で涙した。責任感が人一倍強く、どんなに苦しい状況でもファイティングポーズを崩さなかった平山が人目もはばからずに「弱さ」をあらわにした。私が平山の悔し涙を目にしたのは東九州龍谷高(大分)3年時、決勝で金蘭会高(大阪)に屈した「春高」以来だった。 「情けない気持ちでいっぱい」と自らを責める言葉も、平山は口にした。今大会で決勝進出の原動力となった深澤めぐみ(21)と北窓絢音(20)が担うレフト側からの攻撃も、途中から選手交代で高くなった相手のブロックの前に失速。チーム全体でも攻守にほころびが出て、サーブミスも目立ち始めた。 2セットを先取して主導権を握っていたはずなのに、追い詰められていくような重苦しい空気を打破できない。平山自身もアタックで11打数無得点。ブロックポイントも挙げられなかった。数値が全てではない。それでも本来のパフォーマンスにはほど遠かった。 「それぞれの役割を果たそう」―。浮足立つ若手をそう言って鼓舞する一方で、コートでは自分の役割を果たせないもどかしさ…。交代した際はウオームアップエリアの先頭で祈るように手を握りしめて、仲間のプレーを見つめていた。願いは届かなかった。最終第5セット(15点先取)は13―15で力尽きた。 SAGA久光が前回皇后杯を制した2021年、入団3シーズン目だった平山は高校の1学年上の先輩でもある中川美柚とともに21歳でコートに立ち、躍動した。はじけるような当時の笑顔は不安の裏返しだった。「本当は、怖かったんです。でも、そこは繕って…無理しても笑わなきゃいけないときがある」。